真世紀エヴァンゲリオン Menthol Lesson12 Building Blocks destory -24




Truth Genesis
EVANGELION
M E N T H O L 
Lesson:12

Building Blocks destroy





ジャァァーーー・・・。ガチャ・・・。
「ふぁぁ~~~あ・・・。」
扉の向こうから水流の音が聞こえ、水色の半袖パジャマ姿で大欠伸をしながらトイレから出てくるノゾミ。
余談だが、現在時刻は午前5時前と家の中はまだ薄暗く、本日が日曜日と言う事も考えれば起きるにはかなり早い時間。
ガチャ・・・。
「ん~~~・・・。眠い・・・・・・。」
トイレの扉を閉めると、ノゾミは二度寝をしようと一旦は部屋へ向かうが、喉の乾きを覚えて寝ぼけ眼を擦りながらキッチンへと向かう。
「・・・・・・あれれ?昨日、買ってきたジュースは?」
そして、キッチンと廊下を仕切る暖簾を潜り、冷蔵庫を開けたノゾミが、買い置きのジュースが無くなっている事を不思議に思った次の瞬間。
「ごめん・・・。それ、ノゾミのだったの?さっき、私が飲んだわ」
「えっ!?・・・うわっ!!?ヒ、ヒカリお姉ちゃんっ!!?」
キッチンテーブルに肘を付いて座り、祈る様に組んだ両手を額に当てて俯いていたヒカリが、顔をゆっくりと上げてノゾミの疑問を応えた。
ちなみに、ヒカリの服装はピンク色した半袖膝下半ズボンのチャイナ風パジャマ姿。
「何よ・・・。そんなに驚かないでも良いじゃない」
「だって、いきなり声をかけるんだもん・・・って言うか、何やってんの?こんな時間に?まだ、ええっと・・・。朝の5時だよ?」
予告もなく唐突に現れた間近な気配に寝ぼけ眼を一気に見開かせ、ノゾミは思わず後ずさりながら声の発生源へ勢い良く振り向いてビックリ仰天。
「・・・ちょっとね」
「ふ、ふぅぅ~~~ん・・・。」
ヒカリはノゾミの驚きぶりに苦笑を浮かべ、深く重すぎる溜息を吐き出しつつノゾミの質問に応える。
「ひょ、ひょっとして・・・。ぜ、全然、寝てないとか?」
「・・・ええ」
これ以上は立ち入れぬ何かをヒカリから感じ取って怯むが、ノゾミはヒカリを見つけた時から気になっていた事を聞かずにはおれず尚も尋ねた。
何故ならば、ヒカリは見た目にも明らかに全身から疲労感を漂わせて憔悴しきり、目の下には徹夜の証拠と思しきクマが現れていたからである。
その姿はまるで一夜にして何歳も老け込んだ様な印象すらも受け、ノゾミがヒカリに何があったのかと気になるのも無理はない話。
「そ、そうなんだ・・・。じゃ、じゃあ、もう少し寝るね。わ、私・・・・・・。ヒ、ヒカリお姉ちゃんも少し寝た方が良いよ?」
「・・・ありがとう」
しかし、更に深く重すぎる溜息を吐き出すヒカリの姿に好奇心も萎え、ノゾミが冷蔵庫の扉を開けたまま足早にキッチンを去ろうとしたその時。
「っ!?」
ガタッ!!
「・・・ど、どうしたの?」
ヒカリが何かに反応して目を最大に見開かせつつ席を蹴り立ち上がり、ノゾミが豹変したヒカリの雰囲気に思わず立ち竦んでビックリ仰天。
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ!!
「キャっ!?・・・ヒ、ヒカリお姉ちゃんっ!!?」
するとヒカリはキッチン出入口に立ち塞がって邪魔なノゾミを跳ね退け、驚くノゾミを余所に般若の形相で玄関へと猛烈な勢いで駈けて行った。


キキィィィーーー・・・。
些細な音も立てぬ様に細心の注意を払い、玄関のドアを静かにゆっくりと閉めながら、腰を屈めて後ろ向きに家へ入ってくるコダマ。
バタンッ・・・。
「ふぅぅ~~~・・・。」
たった玄関のドアを閉めると言う行為に約3分間も費やし、コダマが疲労感に思わず溜息を漏らしつつ家へ上がろうと後ろを振り返った次の瞬間。
「お帰りなさい・・・。お姉ちゃん」
「ひゃあっ!?」
玄関先に腕を組んで仁王立つヒカリが、冷たく見下ろしてコダマを低すぎる声で出迎え、コダマは驚きのあまり尻餅をついてビックリ仰天。
「何よ・・・。そんなに驚かないでも良いじゃない」
「ヒ、ヒカリっ!?ど、どうしちゃったのよっ!!?こ、こんな朝早くからっ!!!?」
ならばとヒカリは腕を組んだまま歩を一歩前へ進め、無表情に直上より冷たさを増させた目でコダマを見下ろす。
「別に・・・。私はいつもこの時間に起きてるんだけど?」
「そ、それは平日でしょっ!?きょ、今日は日曜日なんだから、ゆっくりと寝てれば良いじゃないっ!!?」
コダマは直上を見上げ、ヒカリが何故にこんな朝早くから起きているかが解らない以前にヒカリが何故に怒っているのかが解らず戸惑いまくり。
「なに、なに?どうしたの・・・って、あっ!?コダマお姉ちゃん、帰ってきたんだ?」
「ノ、ノゾミまでっ!?」
すると玄関先の騒ぎを聞きつけてキッチンよりノゾミが現れ、コダマは帰ってきた時間を間違えたのかと混乱大パニック。
昨夜はシンジと共にとある高級ホテルのロイヤルスイートルームに泊まり、めくるめく夢の様な一夜を過ごしたコダマ。
そして、夢から醒めたコダマは無断外泊である事を思い出し、全くの謎の疲労感に隣で寝入っていたシンジを叩き起こして慌てて帰ってきた次第。
もっとも、この朝早い時間に帰宅すれば誰も起きておらず、コダマは何食わぬ顔をしていれば無断外泊は絶対にバレないと目論んでいた。
それにも関わらず、目論見は初手であっさりと崩れ去ってしまったのだから、コダマが混乱大パニックに陥ってしまうのも無理はない話。
「ねぇ、ヒカリお姉ちゃん・・・。コダマお姉ちゃん、どうしちゃったの?」
「・・・こんな時間まで何処へ行ってたの?お姉ちゃん」
ノゾミがコダマの様子を怪訝に思ってヒカリへ尋ねるが、ヒカリはノゾミを無視して底冷えする様な低い声でコダマへ尋ねた。
「えっ!?あっ!!?・・・・・・そ、そうっ!!!!アサマの家へ泊まりに行ってたのよっ!!!!!」
「ふぅぅ~~~ん・・・。」
その質問に体を過剰なまでにビクッと震わせて我に帰り、コダマは必死に焦る頭を働かせて応えるが、ヒカリから返ってきたのは疑わしい白い目。
「・・・な、何よ。そ、その目は・・・。あ、あたしが嘘でも言ってるってぇ~~のっ!?」
「ううん・・・。でも、何度もアサマさんの家へ電話したけど誰も出なかったわよ。・・・・・・どうして?」
コダマは思わず体を縮め怯んだ後、逆ギレて猛烈に怒鳴り返すが、全く動じないヒカリは新たな質問を繰り出した。
「い、いや・・・。そ、それは・・・。そ、その・・・・・・。そ、そうっ!!ア、アサマとカラオケへ行ってたからよっ!!!」
「ふぅぅ~~~ん・・・。」
たちまちコダマは勢いを失って焦りまくり、ヒカリが両手を腰に当てて上半身を屈め、白い目を間近まで接近させてコダマの瞳を覗き込む。
「・・・な、何よ。そ、その顔は・・・。そ、そんなに信じられないのなら、アサマに聞いてみれば良いでしょ?」
「そうね。是非、そうさせて貰うわ」
(ヤ、ヤバっ・・・。あ、明日、学校へ早く行って、アサマと打ち合わせしなくちゃっ!!
 ・・・って、ダメよっ!!そうなったら、昨日の事をアサマに言わないといけないし・・・・・・。ああっ!!!アサマ、ごめんっ!!!!)
コダマはヒカリと目を合わせる事が出来ず視線をあちこちへ漂わせ、ヒカリに質草を取られた事にますます焦りまくって混乱を深める。
「あと、もう1つ・・・。」
「ま、まだ有るってぇ~~のっ!?あ、あたし、眠いんだからあとにしてよねっ!!!」
しかし、ヒカリは追求の手を緩めずに更なる質問を重ね、コダマがこれ以上のボロが出てはたまらないと焦りを必死に隠して立ち上がったその時。
「あっ!?」
「な、何よっ!?」
2人のやり取りが解らず沈黙を保っていたノゾミが驚き声をあげ、コダマが苛立ちを装って次は何だと言わんばかりに声を荒げる。
「その服、どうしたのっ!?そんなの持ってなかったよねっ!!?」
「っ!?」
ノゾミはコダマが着用している見覚えのないグリーンのワンピースを指さし尋ね、ヒカリがコダマの姿を改めて確認して驚愕に目を見開いた。
ちなみに、ノゾミはただ単にコダマが自分の知らない服を隠して持っていた事に驚いているが、ヒカリの驚きの種類はノゾミとは全く違う。
ヒカリが驚いている理由、それはコダマの服装が昨日と別物へ変わっている事に他ならない。
しかも、コダマが着ているワンピースは明らかに有名ブランド品であり、とてもコダマのお小遣いの範囲では絶対に手が出せない代物。
ましてや、コダマは月半ばにしてお小遣いが尽きかけ、つい先日に洞木家の財布の紐を握るヒカリへ追加のお小遣いをねだりに来たばかり。
これだけの条件が揃えば自ずとワンピースの入手経路は絞られ、ヒカリにはデート相手であるシンジから買って貰ったとしか思えないのである。
「何だ、この事?これなら、シンジから買って貰ったんだけど、素敵だと思わ・・・。」
「「シ、シンジぃぃ~~~っ!?」」
コダマは無断外泊の追求から逃れた事につい気を緩めてしまい、ヒカリとノゾミがコダマの言葉内の単語にこれ以上なく驚愕して叫ぶ。
「えっ!?・・・あっ!!?い、いや・・・。あ、あのね。ち、違うの・・・・・・。」
「「どうして、(お姉ちゃん、コダマお姉ちゃん)が(碇君、碇先輩)を呼び捨て(に出来るのよ、で呼べるの)っ!?」
一拍の間の後、コダマは己の失言に気づいて慌てて取り繕おうとするが、ヒカリとノゾミがそれよりも早くコダマの襟首を左右から掴んで迫る。
「だ、だって・・・。シ、シンジがそう呼べって言うから・・・・・・。」
「「だから、どうしてっ!?」」
「い、いや・・・。あ、あたしの方が年上だから遠慮する事ないって・・・・・・。」
コダマは2人の迫力に気圧され、せっかく立ち上がったのに背をドア伝いにズリズリとずり落ち、再びその場へペタンと尻餅をついてしまう。
「「少しは遠慮しなさいよっ!!」」
「い、良いじゃない。べ、別に・・・。」
「「良くないっ!!」」
一方、ヒカリとノゾミはコダマが何かを応える度に興奮のボルテージを上げ、真新しいワンピースの襟首を力強く掴んで皺を作ってゆく。
「どうしてよっ!!シンジは私の・・・って、あれ?ヒカリは何となく解るんだけど・・・。なんで、ノゾミも怒ってるの?」
「・・・えっ!?」
おかげで、遂にコダマは本格的に逆ギレ、己の正当性を訴えるべく勢い良く立ち上がるが、ふとノゾミの怒りようの意味不明さに気づいて尋ねた。
「そう言えば・・・。そうね」
「そ、そ、そ、そ、そんな事、今はどうだって良いじゃないっ!!い、い、い、い、い、今はお姉ちゃんに聞いてるんでしょっ!!!」
ヒカリもコダマに同調して怪訝そうな目をノゾミへ向けると、今度はノゾミが焦りまくり、ヒカリを味方に引き込むべく話題転換を必死に計る。
「そう、そうだったわっ!!・・・私、知ってるのよっ!!!
 アサマさんへ碇君を紹介するとか、何とか言って・・・。昨日、本当はお姉ちゃんが碇君とデートしてた事をっ!!」
「嘘っ!?それ、本当なのっ!!?ヒカリお姉ちゃんっ!!!?」
だが、再び怒りの矛先を向け直したヒカリから放たれた切り札に驚き、目を最大に見開いたノゾミは今さっきの焦りなど忘れて固まった。
「さあ、正直に言いなさいよっ!!こんな時間まで誰と何処で何をしてたかをっ!!!」
「だ、だから、アサマとカラオケへ・・・。」
「アサマさんは親戚の法事でしょっ!!ちゃんと携帯に電話して知ってるのよっ!!!碇君と一緒に居たのは解って・・・って、キャっ!!!?」
そうとは気づかず、ヒカリは更なる切り札で厳しくコダマを追求しようとするが、ノゾミがヒカリを力一杯に押し退けてヒカリの言葉を止める。
「コダマお姉ちゃん、どういう事っ!?嘘だよねっ!!?嘘だって言ってよっ!!!?・・・ねえってばっ!!!!?」
ドンッ!!
「ノ、ノ、ノゾミ・・・。く、く、く、苦しい・・・・・・。」
その代わり、半泣きのノゾミがコダマをドアへ押しつけて更に厳しい追求を行い、コダマが襟首を掴むノゾミの力強さに悲鳴をあげた次の瞬間。
ガラッ!!スパァァーーーンッ!!!
「3人ともっ!!朝からうるさいぞっ!!!近所迷惑だろうがっ!!!!」
玄関から続く廊下突き当たりの部屋の襖が勢い良く開き、現れた青い縦縞模様のパジャマ姿のマックスが玄関へ向かって凄まじい怒号を轟かせた。


「それで・・・。こんな時間になるまで何処で遊んでいたんだ?」
玄関先に腕を組んで正座で座り、疲れ切った深い溜息で言葉を溜め、厳しく鋭い視線を対面へ向けるマックス。
ちなみに、マックスもヒカリ同様にコダマの帰りを待っての徹夜らしく、全身から疲労感を漂わせて目の下に徹夜の証拠であるクマを作っていた。
「「だからっ!!」」
「2人は黙っていなさい。今はコダマへ聞いているんだ」
正座して深く俯くコダマは何も応えようとはせず、代わって左右に正座するヒカリとノゾミが応えようとするが、マックスが睨んで2人を制する。
「「は、はい・・・。」」
「さあ、黙ってちゃ解らんだろ。怒らないから、正直に昨晩は何処へ行ってたのかを言いなさい」
たちまちヒカリとノゾミは未だ嘗て感じた事のないマックスの有無を言わさぬ迫力に押し黙り、マックスが穏やかな声でコダマへ返事を促す。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
それでも、やはりコダマは俯いて押し黙ったまま何も応えず、マックスは目を瞑ってコダマが口を開くのを静かに待つ。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
静寂だけがただ徒に過ぎてゆき、どれくらいの時が経ったのか、ようやくコダマが膝の上に乗せている両拳を決意にギュッと握って口を開いた。
「ア、アサマと一緒にカラオケへ・・・。」
「「嘘っ!!」」
コダマはマックスの顔が見れず俯いたまま怖ず怖ずとか細い声を絞り出し、ヒカリとノゾミがコダマの嘘に腰を浮かせてコダマへ真実を迫る。
「私は黙れと言ったはずだっ!!」
「「は、はい・・・。」」
しかし、マックスに今度は睨まれた上に怒鳴られ、たちまちヒカリとノゾミは身を竦め縮めて押し黙った。
「・・・信じて良いんだな?」
「えっ!?」
場が再び静まり返ると、マックスは深い溜息混じりにコダマへ尋ね返し、コダマがマックスの言わんとする事が解らず顔を上げる。
「父さんはコダマがアサマさんと一緒にカラオケへ行ったと信じて良いんだな?」
「・・・・・・う、うん」
マックスはコダマを見据えつつ確認の言葉を補って改めて問い、再び深く俯いたコダマは膝の上の両拳をギュッと握り締めて躊躇いがちに頷いた。
「解った・・・。父さんは寝る。お前達も寝ろ」
「「お父さんっ!!」」
するとマックスは深く頷いて立ち上がり、ヒカリとノゾミもマックスの裁定に不満の声をあげて立ち上がる。
「・・・ま、待ってっ!!」
「なんだ?」
「じ、実は・・・。(シ、シンジ、ごめん・・・。で、でも、お父さんだけには・・・・・・。)」
去ってゆくマックスの後ろ姿に良心がキリキリと痛み、コダマが耐えきれず真実を語ろうと呼び止め、マックスが後ろを振り返った次の瞬間。
ガチャッ!!
「・・・やっぱり、僕から説明するよ。コダマさん」
玄関のドアが勢い良く開け放たれて朝日に逆光を浴びるシンジが現れ、切なそうに涙目となっているコダマへ極上の笑みでニッコリと微笑んだ。
「碇君っ!?」「シンジっ!?」「碇先輩っ!?」
「き、君は確か・・・。」
ガチャッ・・・。
「洞木一尉、申し訳ありませんっ!!全ての原因と非は僕にあり、コダマさんには何ら非はありませんっ!!!」
予想外すぎる人物の登場に洞木家の面々が茫然とする中、シンジは玄関のドアを静かに閉めると、マックスへ向かって額を擦り付けての土下座。
「シ、シンジ、止めてよ・・・。な、何もそこまでする事ないじゃない。ほ、ほら、立って・・・・・・。」
「いや、理由ならあるっ!!僕にはまだ解らないけど、子供を持つ親なら家へ帰って来ない子供を心配するのは当然至極っ!!!
 ましてや、コダマさんは女の子だっ!!女の子の父親なら、その心配は尚更の事っ!!!
 だから、僕は君のお父さんへ謝らなければならないっ!!何故なら、君を家へ帰さなかった原因の全てはこの僕にあるのだからっ!!!」
すぐさま駈け寄ったコダマがシンジの肩を揺さぶって立つように促すが、シンジは頑なに頭を上げようとはせず玄関に額を擦り付けたまま。
「っ!?(う、嘘・・・。う、嘘だよね。な、何が事情があっての事なんだよね?い、碇君・・・・・・。)」
「っ!?(う、嘘・・・。う、嘘ですよね。コ、コダマお姉ちゃんにそう言えって頼まれたんですよね。い、碇先輩・・・・・・。)」
シンジの更なる予想外すぎる行動は勿論の事、ヒカリとノゾミがシンジの堂々とした浮気宣言に驚愕して目を最大に見開く。
「・・・なら、どういう事なのかを説明して貰えるね?碇君」
「はいっ!!今も言いましたが、お嬢さんを家へ帰さなかった原因の全てはこの僕にありますっ!!!」
「すると・・・。昨夜、コダマと一緒にいたのは君と言う事だね?」
一拍の間の後、我を取り戻したマックスは努めて心を落ち着けて玄関へ戻り、シンジを見下ろしつつ腕を組んでコダマの無断外泊の真相を問いた。
「はい、その通りですっ!!昨夜、僕はお嬢さんと相模のとあるホテルで一夜を明かしましたっ!!!」
「「っ!?っ!!?っ!!!?」」
応えてシンジは一切を包み隠さずに真実を語り、ヒカリとノゾミがその真実から導き出される答えに衝撃を受けて見開いた瞳に涙を溜めてゆく。
「・・・君は自分の言っている言葉の意味が解っているんだろうね?」
「勿論ですっ!!・・・・・・ですがっ!!!」
マックスは激情に駆られて組んでいた腕を解き、シンジの襟首を掴み持とうとするが、言葉切って勢い良く上げたシンジの顔にビックリ仰天。
「ですが、僕とコダマさんの間に何らやましい事はありませんっ!!天地神明、この命に誓ってもですっ!!!」
「・・・な、ならば、どういう事なんだね?」
シンジは涙をハラハラとこぼして男泣きながら身の潔白を切に訴えて再び額を擦り付け、マックスはシンジの気迫に気圧されて思わず一歩後退。
「実は大変にお恥ずかしい話なんですが、昨晩の夕飯に2人でフランス料理を食べに行きまして・・・。
 そこで僕は背伸びをして、コダマさんの前で良い格好を見せようと赤ワインを注文しました。
 そして、コダマさんにも無理に勧めた結果・・・。コダマさんは初めてのお酒に泥酔してしまい、慌てて部屋を取って寝かせたと言う次第です」
まるでシンジはその隙を突くかの様に昨夜の事情を言葉早に捲し立てた後、洞木家の面々に考える間を与えるかの様に沈黙した。
(なんだ、そう言う事だったんだ・・・。そうよね。碇君に限って、そんな事ないよね)
(やっぱり、そんな事だろうと思った。でも・・・。どうして、コダマお姉ちゃんと碇先輩がデートしなくちゃいけないの?)
(ま、まあ、嘘は言ってないよね。そ、その後はともかく、本当の事なんだし・・・。)
その誠意ある態度と弁明に、ヒカリとノゾミはシンジを信じきって安堵の溜息をつき、コダマは複雑な表情を浮かべて大粒の汗をタラ~リと流す。
(なるほど・・・。それなら、コダマのコソコソした態度も納得がゆく・・・・・・。
 しかし、彼は根っからの女好きって噂だけになぁ~~・・・。ファーストにセカンド、フィフス、技術部の伊吹二尉と数えあげたらキリがない)
マックスもまたシンジを信じて納得しかけるが、ふとネルフ内に広がっているシンジの風評を思い出して再び頭の中に疑惑が蔓延し始める。
「あとこれだけは信じて欲しいのですが・・・。僕がコダマさんにお酒を飲ませたのは不埒な考えがあっての事ではありませんっ!!
 また、コダマさんをベットへ寝かせた後、僕はコダマさんが目を覚ますまで指一本たりとも触れてはいませんっ!!信じて下さいっ!!!」
シンジはマックスの心の変化を機敏に感じ取ったかの様に言葉を取り戻し、再び言葉早に捲し立てて身の潔白を切に訴えた。
余談だが、シンジの弁明の言葉には全て嘘偽りがなく、シンジは真実のみを語っている。
もっとも、コダマが酔いから醒めた後は指一本どころか、全くの謎の11本目の指でコダマを約3時間に渡って触れまくり。
「解った・・・。解ったから、頭を上げなさい。碇君」
「では、信じて頂けるんですねっ!!」
「ああ、信じよう。・・・ただ、未成年がお酒を飲むのは良くないぞ?」
マックスは誠意の溢れる態度と弁明に疑った自分を恥じ、シンジの側へ寄って片跪き、表情を緩めつつシンジの脇を両手で持って頭を上げさせた。
「はい、それはもうっ!!お酒なんて、もう懲り懲りです・・・って、あれ?洞木さんにノゾミちゃん?」
「「・・・えっ!?」」
「参ったな・・・。格好悪いところを見られちゃったね」
シンジはマックスに促されるまま男泣く顔を上げて立ち上がり、この場にヒカリとノゾミも居た事を知ってバツの悪そうな表情を浮かべる。
「ううんっ!!そんな事ないっ!!!碇君、凄く格好良かったよっ!!!!」
「そうですよっ!!人の為に土下座なんて、なかなか出来る事じゃないですっ!!!」
だが、ヒカリとノゾミは揃って首を左右に振ってシンジの言葉を否定し、シンジへ瞳をキラキラと輝かせた感動の眼差しを向けた。
「そうかな?・・・でも、やっぱり格好悪いから、この事は誰にも言わないでね」
「解ってる・・・。私の為にありがとう・・・。シンジ・・・・・・。」
シンジは照れ隠しに右頬を右人差し指でポリポリと掻き、コダマも感動に瞳をキラキラと輝かせ、己を庇ってくれたシンジに涙をホロリとこぼす。
(んっ!?・・・はっ!?ま、まさか・・・。ま、まさか・・・。ま、まさかとは思うが・・・・・・。
 ひょ、ひょっとして、うちの娘達は同じ男に惚れ込んでいるって事はないよな・・・。ははははは・・・。ま、まさかな・・・・・・。)
3人の表情に恋する乙女特有の物を感じ、マックスが漠然と嫌な予感を覚え、顔を引きつらせながら大粒の汗をタラ~リと流したその時。
ウゥゥ~~~~~~~~~~ッ!!
『只今、東海地方を中心とした関東中部の全域に非常事態宣言が発令されました。
 速やかに市民の皆さんは非常事態マニュアルの指示に従って指定のシェルターへ避難して下さい。繰り返し、お伝えします・・・。』
第三新東京市市民に義務付けられ、玄関先に置かれた無線機より第三新東京市市民を叩き起こす目覚まし時計のベルが鳴り響いた。


「状況はっ!?」
「おはようございます。32分前に突然現れました」
ミサトが血相を変えて発令所へ駈け現れ、日向が振り返って挨拶と共に状況報告をする。
ちなみに、ミサトが発令所へ駈け現れ、日向が発令所に居たと言う事は、ゲンドウと冬月の留守を預かる昨夜の夜勤は日向だったと言う証拠。
そして、昨日の日勤も既にご承知の通り、ミサトに代わっての日向であり、昨々日の夜勤も日向であった。
つまり、これ等を総合すると日向は最低でも連続36時間労働と明らかな労働基準法違反。
それ故、同じく昨夜の夜勤だった青葉は見かねて日向を不憫に思い、内緒で昨夜午前0時より使徒発見まで日向に仮眠を無理矢理に取らせていた。
『第6サーチ、衛星軌道上へ』
『接触まで、あと2分』
『目標を映像で確認』
発令所のメインモニターが切り替わって使徒の姿が映し出されるなり、発令所の彼方此方でどよめきがあがる。
薄平べったく細長い体躯を持ちながら今までにない超巨大な体長を持ち、体中央と左右に巨大な目玉模様、両端には指を思わせる5本の出っ張り。
何とも形容し難く強いて言うなら分裂途中のアメーバの様な形、初の地球衛星軌道上に現れた第10使徒『サハクィエル』である。
「・・・こりゃ、凄い」
「常識を疑うわね・・・。」
「目標と接触します」
日向とミサトが息を飲んで驚きに言葉を失いかけるも、青葉が驚く間など与えず次なる状況報告の声をあげた。
『サーチ、スタート』
『データーの送信を開始します』
『受信確認』
2つの人工衛星が使徒を挟んで徐々に重なってゆくが、重なった瞬間に光が瞬くと共に人工衛星は破壊され、モニターにはサンドストームが走る。
「ATフィールドっ!?」
「・・・新しい使い方ね(もっとも、シンジ君は既に何度か使ってるけど・・・・・・。)」
ミサトは光の正体を推察して驚きに目を見開き、マヤの到着を待って代わりに席へ座るリツコが、コーヒーを飲みながら興味深そうに目を細めた。


ブクブクブクブクブク・・・。ポットンッ・・・・・・。
自ら切り離した片端の一部を遥か眼下にあるインド洋へ降下させる使徒。
ヒュゥゥゥゥゥーーーーーーンッ・・・。
・・・ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!
その一部は大気圏の摩擦熱で赤く燃えるが燃え尽きず、海面へ落着して凄まじい衝撃を発生させ、大津波となって近隣のインド洋沿岸部を襲った。


「大した破壊力ね。さすがはATフィールドと言ったところかしら?」
モニターに映る使徒の攻撃力の高さと攻撃後の有り様に眉を顰め、腕を組みつつ顎に右手を当てて呟き唸るミサト。
「落下のエネルギーをも利用している様ね・・・。言ってみれば、使徒そのものがN2を遥かに越える爆弾。
 取りあえず、初弾はインド洋に大外れ。・・・で、2時間後には南シナ海。あとは確実に誤差修正をしているわ」
パイプ椅子に足を組んで座るリツコは、何処か場違い的にコーヒーを優雅に飲み、ミサトの呟きに応えて分析結果を述べる。
「来るわね。確実に・・・。」
「ええ、次はここへ本体ごとね」
その分析結果と被害報告のモニター映像から使徒がネルフ本部を確実に目指している事を悟り、ミサトが不敵に笑ってリツコへ横目を向ける。
「その時は第3芦ノ湖の誕生かしら?」
「いいえ、富士五湖が1つになって太平洋と繋がるわ。・・・本部ごとね」
応えてリツコはコーヒーカップを一気に傾けて飲み干した後、下げたコーヒーカップの下からミサト同様の不敵な笑みを現した。
「・・・碇司令は?」
「使徒が放つ強力なジャミングの為、連絡不能です」
「使徒の到着予定時刻は?」
「今までの経緯から予想すると本日1230です」
「MAGIの判断は?」
「全会一致で撤退を推奨しています」
一拍の間の後、ミサトは表情をキリリと引き締め、青葉と日向とマヤが求められた報告に素早く返してゆく。
「しかも、唯一の対空兵器『N2航空爆雷』も全く効果なしと・・・。こりゃ、本当にお手上げね」
「・・・どうするの?今の責任者はあなたよ?」
ミサトは旗色の悪すぎる報告に溜息をついて肩も竦め、リツコが煙草に火を着け、1口目の煙を吐き出しつつミサトへ決断を促す。
余談だが、発令所は勿論の事、ネルフ本部内全域は公共の場である為、当然の事ながら一部の場所を除いて禁煙である。
「えっ!?あっ!!?・・・先輩、これを使って下さい」
「あら、悪いわね」
マヤは髪へかかった紫煙に驚きながらも慌ててコンソールの引出内を探り、見つけた紙コップに少しだけ水を注いで灰皿代わりにリツコへ手渡す。
「日本政府各省へ通達っ!!・・・0800を以て、ネルフ権限における特別宣言『D-17』を発令っ!!!
 並びに周辺住民へのネルフ本部半径50キロ以上の強制退去命令を発令っ!!松代にはMAGIのバックアップを頼んでっ!!!」
同時にミサトが決断に頷いて言葉を溜め、現責任者としての判断と決定を発令所に響かした。
特別宣言『D-17』、その意味は現有する戦力では目標を殲滅する可能性が低い為、最悪の場合はネルフ本部の破棄をも考えると言うもの。
つまり、ネルフ本部最下層に設置された12発のN2地雷を連鎖爆破させ、使徒もろともネルフ本部を自爆しようと言う神風特攻な目論見である。
「ここを放棄するんですかっ!?」
「いいえ・・・。ただ、みんなで危ない橋を渡る必要はないわ」
日向が驚きのあまり思わず席を勢い良く立ち上がり振り返って尋ね、ミサトは淡々と落ち着いた様子で苦笑を浮かべながら応えた。


『政府による特別宣言D-17が発令されました。市民の皆様は速やかに指定外の場所へ避難して下さい』
日本晴れの青空は避難警報を伝える戦自のヘリで埋め尽くされ、地上の道路は全線が一方通行に変更されて避難する車で大渋滞。
第三新東京市各駅の路線も全てが下りに切り替わり、車両倉庫にある全ての車両が出されて臨時増発を増やすも全て乗車率200%以上の大混雑。
ウィーーン・・・。ウィーーン・・・。ウィーーン・・・。
『第6、第7ブロックを編成に各区長の指示に従い、速やかに移動をお願いします』
避難する者達の横でビルもまた次々とジオフロントへ隠れ、ビルが乱立する第三新東京市の街並みが次第に平地へと変わってゆく。
そして、その避難民の中にはネルフ本部の自爆を前提とする作戦だけにネルフ職員も多く含まれていた。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
前後左右と見渡す限りが緊迫した慌ただしさで溢れる中、別の緊迫感で空気がピリピリと張りつめている洞木家車中。
助手席に座るコダマはドアに頬杖を付いて無表情に外の景色を眺め、後部座席に離れて座るヒカリとノゾミもコダマ同様に外の景色を見学中。
3人は自宅を出て以来ずっとこの調子で車内に会話は一言たりともなく、時を追う毎に緊迫感だけが天井知らずに上昇していた。
無論、それ等の原因は全てコダマが内緒でシンジとデートした事実に他ならない。
突然のシンジの登場と弁明により、ヒカリとノゾミが抱えていた『シンジとコダマが深い仲になっちゃった疑惑』は確かに晴れた。
ところが、シンジとコダマがデートをしたのは正真正銘の事実であり、ヒカリとノゾミがシンジの彼女としてコダマを許せないのは当然の事。
しかも、シンジから服などをプレゼントして貰ったとなれば、ヒカリとノゾミが自分でもまだなのにと大憤慨してしまうのも無理はない話。
一方、コダマもコダマで自分の彼氏からプレゼントを貰って何が悪いと腹を立て、ヒカリとノゾミに理不尽を感じて反発するのも無理はない話。
実際、洞木姉妹は最初の避難場所であるシェルターで人目も憚らず大声で罵り言い争い、シェルター係員を激しく困らせたほど。
それこそ、ネルフ本部へ一時出勤したマックスが娘達をシェルターへ探しに来た際、思わず他人のフリを決め込もうかと悩んだくらい。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
マックスは漂う緊迫感に息苦しさを覚え、一時出勤の為に着替えたスーツのネクタイを緩め、何とが場を和らげようと会話を試みる。
「きょ、今日は暑いなっ!?の、喉が乾くだろっ!!?く、車を止めて、ジュースでも買おうかっ!!!?」
「「「・・・・・・。」」」
「はははははははははは・・・。す、すまん、すまんっ!!い、今はそんな事を言ってる場合じゃないよなっ!!!はぁ・・・・・・。」
だが、愛する娘達は無視して顔すらも向けず、いたたまれなくなったマックスは乾いた笑い声で場を繋ぎ、酷い疲労感が漂う深い溜息をついた。
「・・・そ、そうだっ!!こ、このままドライブとしゃれ込んで日本海まで行き、夕飯に海の幸でも食べるってのはっ!!!
 そ、そう、それが良いっ!!と、父さんは刺身を摘みに地酒をキュ~っとっ!!!お、お前達は取れたてピチピチな鮮魚の寿司でもっ!!!!」
それでも、マックスは萎えまくる気力を果敢に振り絞り、声を上擦らせながらも陽気に新たな話題で会話を試みる。
「・・・お父さん、不謹慎よ」
「うわぁぁ~~~い・・・。」
しかし、ようやく返事を返してくれた事はくれたが、コダマからは鬱陶し気に注意が返され、ノゾミからは白々しい歓声が返された。
その上、2人とも窓の外の景色を見たままで顔をピクリとも動かさないオマケ付き。
「ヒ、ヒカリはどうだっ!?こ、この前、たまには寿司でも食べに行きたいって言ってただろ?」
「私・・・。ダイエット中だから・・・・・・。」
ならばとマックスは顔を引きつらせつつ返事のなかったヒカリへ尋ねるが、ヒカリもまた窓の外の景色を見たままでマックスを冷たくあしらった。


「ええぇぇ~~~っ!!手で受け止めるぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!!!」
それぞれがプラグスーツへ着替え終え、集められたブリーティングルームでの席上、アスカが作戦内容を聞くなり驚愕に目を最大に見開いた。
「そう、落下予測地点にエヴァ各機を配置。
 その後、MAGIの誘導と各自の判断で使徒の元へ行き・・・。直接、ATフィールド最大であなた達が使徒を受け止めるの」
なにせ、その作戦と言うのがこの通り、大胆かつ単純明快な物なのだから無理もなく、アスカの様に声こそ出さないが他の面々も驚きを隠せない。
「使徒が大きくコースを外れた場合は?」
「その時はアウト♪」
カヲルは驚き以上に不安を隠せずミサトの言葉が終わると同時に尋ね、ミサトが皆の緊張を和らげるべく殊更に笑顔で応えを返す。
ちなみに、カヲルが着用するプラグスーツの色は藍色と他に比べて割と地味な色だが、カヲルが乗る四号機は白銀色と他に比べて最も派手な色。
また、カヲルがレイとアスカの隣にプラグスーツ姿で列ぶと、その中学生離れしたスタイルはかなり際だち、最初はマヤが嫉妬したほど。
「機体が衝撃に耐えきれなかったら?」
「その時もアウト♪」
だが、アスカはミサトの笑顔に胡散臭さを感じて眉間に皺を刻み、ミサトはますますニコニコとこぼれんばかりの満面の笑顔。
「・・・勝算は?」
「0.000001%・・・。神のみぞ知ると言ったところかしら♪」
さすがのレイも無表情を崩して不安気な瞳を隣のシンジへチラリと向け、ミサトはレイの問いに自信満々の表情で親指をニュッと立てて見せた。
「・・・ほ、ほんまに大丈夫なんでっか?」
「そうよっ!!これで上手くいったら奇跡だわっ!!!」
ミサトが上機嫌ぶりを発揮すればするほど、トウジはアバウト過ぎる作戦に不安を覚え、アスカが呆れの混ざった怒鳴り声で作戦批判をした途端。
「奇跡ってのは起こしてこそ、初めて価値がある物よ」
「つまり・・・。何とかして見せろって事?」
ミサトの表情が険しくキリリと引き締まって真剣な物となり、アスカがその表情に並ならぬミサトの決意を感じ取って声のトーンを自然と下げる。
「済まないけど、他に方法がないの。この作戦は・・・。」
「作戦と言えるのっ!!これがっ!!!」
「本当、言えないわね・・・。だから、嫌なら辞退する事が出来るわ」
それでも、アスカの声は不安に再び怒鳴り声へと戻り、ミサトはアスカの作戦批判を甘んじて受け、頷いて優しく穏やかな表情を皆へ向けた。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
何ら変わった様子もなく平然と構え、足と腕を組みながら静かに瞼を閉じ、寝不足に必要なカフェイン摂取をとコーヒーを飲むシンジ。
シンジの右隣の席を陣取り、シンジへ刹那だけチラリと視線を向けて決意に頷き、心を静める為に紅茶の用意をし始めるレイ。
シンジの対面の席を陣取り、愚問と言わんばかりに机の上に出されたポテチを頬張るも噛まず、やや不安気な視線をシンジへ向けるアスカ。
シンジの左隣の席を陣取り、いつもと変わらぬシンジに苦笑を浮かべ、口の中のオレンジ味の飴玉をコロコロと転がすカヲル。
下座の席を陣取り、大股開きで腕を組んで堂々とはしているが、しきりに目線だけを左右に動かし、皆が作戦拒否しないので拒否できないトウジ。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
上座のホワイトボード前に立つミサトが皆の顔を左からゆっくりと順々に眺め、再び皆の顔を右からゆっくりと順々に眺めて視線を戻したその時。
「みんな、良いのね・・・って、え゛っ!?シ、シンジ君は嫌なの?」
「「「「えっ!?」」」」
飲み終わった紙コップを置いたシンジの右手が拒否を示して挙がり、ミサトは勿論の事、レイとアスカとカヲルとトウジも驚きに目を見開く。
「さっき、ミサトさんは奇跡とは起こしてこそ、初めて価値がある物と言いましたが・・・。僕にはそう思えません。
 奇跡とは幾つもの偶然が重なって進んだ道の跡に出来る物であり、起きてから初めて価値がある物だと考えます。
 つまり、起こす奇跡などは必然。この場合では必然が作戦内容に当たり、その作戦成功率が万に一つもないのだから拒否するのは当然の事です」
シンジは顔色を変えずミサトの頼みの綱の否定論を淡々と説きつつ、皆の顔をグルリと見渡して最後にミサトへ厳しい視線を向けた。
「そ、そう・・・。ざ、残念だわ・・・・・・。」
「おっと、ガッカリするのはまだ早いですよ?僕は作戦には反対ですが、作戦にはちゃんと参加します」
「へっ!?・・・どういう事?」
最も信頼するシンジに裏切られ、ミサトは落胆に肩をガックリと落として項垂れるが、すかさず続いたシンジの矛盾に不思議顔を上げる。
「解りませんか?作戦案の変更を要求すると言ってるんですよ。十に一つくらいの作戦にね」
「でも・・・。これ以外にどんな方法があるの?」
「なに、簡単な事ですよ。使徒を狙撃すれば良い」
「それなら、私も考えたけど・・・。今回は第5使徒の時の様にはいかないわよ?
 あの時と違って、ライフルの有効射程内に入った時は既に相手は猛スピードで落下中・・・。とても照準を合わせる暇なんてないわ。
 それに何よりも、第5使徒を上回るATフィールドの強度を持つ相手な上、撃ったところで本当に倒せるのかもデーター不足で解らないのよ?」
シンジは愉快そうに口の端をニヤリと歪めて作戦新案を説くも、ミサトがその方法なら既に検討して却下済みと反対論を説く。
「チッチッチッチッチッ!!・・・大丈夫。使徒自身がその攻撃手段を教えてくれています」
「・・・と言うと?」
しかし、シンジは連続して舌打ちながら立てた右人差し指を左右に振り、口の端をニヤリと歪めたままの自信満々な表情をミサトへ返した。


(・・・と言っても、僕もその単純な盲点に気づくまで随分とかかったんだけどね。
 いつだったか・・・。戦いには勝利したけど機体が耐えきれず、トウジが逝ってしまった時・・・。あの時は酷かったな・・・・・・。)
ネルフ本部のとある男子トイレ、用を足しながら今まで何度となく苦戦を強いられてきた第10使徒戦の思い出に耽るシンジ。
ちなみに、シンジはプラグスーツ着用中の為、構造上故にプラグスーツをお尻まで脱がなければならず、その用を足す姿はちょっぴり間抜け。
(しかし、いつもながらプラグスーツって不便だよね。トイレへ行くのも一苦労だよ。まあ、綾波達はもっと大変なんだろうけど・・・。)
プシューー・・・。
用を足し終えたシンジは、プラグスーツを改めて着込みながらトイレを出て行き、プラグスーツを体に密着させるべく左手首のボタンを押した。
プシューー・・・。
「んっ!?」
「えっ!?・・・あっ!!?やっと見つけたわよっ!!!!シンジっ!!!!!」
すると隣でも圧縮空気の抜ける音が響き、シンジが反射的に隣へ顔を向けると、同じく用を足し終えて女子トイレから出てきたアスカと遭遇。
「やあ、アスカ。そんなに怖い顔をして、どうしたんだい?」
「どうしたかじゃないわよっ!!あんた、昨日の夜は何処へ行ってたのっ!!?」
「だから、それに関してはさっきも言ったじゃないか」
「嘘っ!!あたしは誤魔化されないわよっ!!!渚の家でネットをしてただなんて、どうせ嘘なんでしょっ!!!!」
すぐさまアスカは逃げぬようシンジの手首を掴み、先ほど作戦前に誤魔化された昨夜の真相をシンジへ猛烈に迫る。
余談だが、昨日のシンジ達を見失う原因となった不幸な事故の後、夜通しでシンジの帰宅を葛城邸で待っていたレイとアスカとカヲル。
ところが、既にご承知の通り、シンジはコダマと謎の一夜を明かして家には帰らず、ようやく再会できたのは非常召集後のブリーティングルーム。
アスカ達は当然の事ながらシンジへ昨夜の所在を厳しく迫るも、渚邸でネットを徹夜でしていたと言うシンジの証言に追求を回避されてしまう。
何故ならば、カヲルは昨朝より自宅へ帰る事なく葛城邸に滞在していた為、シンジのアリバイ証明が全く実証できなかったからである。
更に何よりも平然と言ってのけるシンジに虚偽の色を見つける事が出来ず、アスカ達はシンジの証言をただただ信じるしかなかった。
もっとも、レイとアスカ的にはシンジが渚邸へ足を運んだ事だけで嫉妬の対象になるのだが、渚邸は碇邸でもある為にかなり判断が難しいところ。
それでも、アスカは時間が経つ毎に納得がゆかなくなり、作戦説明後に姿を消したシンジへ真相を問い質すべく探していたと言う次第。
更に余談だが、コダマと一夜を共にしたらしいとの報告を保安部より聞いていたミサトは、このシンジの茶番を憎々しく思っていた。
だが、日頃の主従関係から口を出す事が出来ず、何よりもスクラップとなったルノーの修理費用を賄って貰う為にも真相は語れなかったのである。
「本当だって・・・。アスカは僕を信じてくれないの?」
「信じたいわよっ!!信じたいけど・・・。いつものあんたを見てるから信じられないのよっ!!!」
「・・・やれやれ、困ったな」
ならばとシンジは反対にアスカへ愛を問い返すが、やや涙目でヒステリック気味なアスカには通じず、形勢不利を悟って作戦変更。
プシューー・・・。
「キャっ!?な、何すんのよっ!!?い、いきなりっ!!!?」
突如、シンジによって緩められたプラグスーツが胸元まで落ち、慌ててアスカがシンジの拘束を解き、自分自身を両手で抱いて胸を覆い隠す。
「なら、正直に言うよ。僕はね・・・。アスカの部屋に居たんだ」
「・・・へっ!?」
しかし、シンジは逃げる事なく反対にアスカの腰を右手で掴んで抱き寄せ、左手でアスカの髪を撫でながらアスカの耳元で甘く囁く。
「でも、アスカの姿はそこに無かった・・・。僕の方こそ、アスカが何処へ行ったのかが解らず、心配で心配でたまらなくて夜も眠れなかったよ」
「えっ!?えっ!!?えっ!!!?・・・じゃ、じゃあ、昨日も来てくれてたの?」
その甘い囁きに今さっきの嫉妬など瞬時に忘れ、アスカは驚きに目を何度かパチクリと見開かせた後、照れ嬉しそうな表情でシンジへ尋ねた。
なにせ、シンジが2夜連続で部屋を訪れるなど未だ嘗て無く、アスカが自分への愛情の深さを感じて嬉しくなってしまうのも無理はない話。
但し、アスカ自身は嬉しさのあまり気づいていないが、これは先ほどシンジが皆の追求を回避したのと全く同じ手段。
これこそ、シンジが師匠『加持リョウジ』より伝授された52の口説き技の1つ『足下ほど意外に嘘はバレ難いもの』の応用である。
「そうさ。だけど、アスカは居ない・・・。だから、僕はアスカを想って、1人で寂しさを紛らわせていたのさ・・・・・・。」
「ひ、1人でって・・・。そ、それって・・・。つ、つまり・・・・・・。」
応えてシンジはアスカを力強くギュッと抱き締め、アスカはシンジの言葉に全くの謎の妄想を働かせ、思わず脱力して顔を真っ赤っかに染めた。
「そう、僕はタンスに入っていたアスカの下着で寂しさを・・・。ごめんよ。変な事に使っちゃって・・・・・・。」
「・・・い、良いわよ。べ、別にそれくらい・・・・・・。」
ギィィ・・・。バタンッ!!カチャッ・・・。
シンジはその隙を突いてアスカの腰を持ち上げ、男子トイレへ逆戻って奥の個室へ鍵を閉めて入り、蓋を開けずにアスカを洋式便座へ座らせる。
「でも、僕の寂しさはそんな事で到底埋まらなかった・・・。」
「ダ、ダメよ。シ、シンジ、ダメ・・・。さ、作戦前なんだから・・・・・・。きゃんっ!?」
「フフ、可愛い声だね。やっぱり、想像より本物の方が良いや」
「・・・ば、馬鹿」
その後、どの様な和解策が取られたかは全くの謎だが、作戦が迫った小一時間後に個室から出てきたシンジとアスカはすっかりと仲直りしていた。


「えへっ・・・。えへへっ・・・・・・。」
いよいよ作戦の時を迎え、5人と緊迫感を乗せてケイジへと向かうエレベーター。
「・・・なあ、綾波。惣流の奴、どないしたんや?」
「知らない・・・。」
「うおっ!?そ、そないな目で睨まんでも・・・。い、一体、どないなっとるねん?な、渚」
「・・・さあね」
「な、何や、何や・・・。な、渚まで・・・・・・。わ、わし、何か悪い事でもしたんかいな?」
だが、その緊迫感は戦闘前特有の物とはほど遠く、先ほどから何やらにやけているアスカを睨むレイとカヲルから発散されている刺々しい緊迫感。
(変・・・。変・・・。変・・・。絶対に変・・・・・・。)
(さっきまではあれほど不機嫌だったはずなのに・・・って、やっぱり、そうなのかい?そんな・・・。嘘だよね?シンジ君・・・・・・。)
レイとカヲルはアスカの挙動不審ぶりの原因を推察して同じ結論に辿り着き、揃って眉を『へ』の字にした悲し気な顔をシンジへ向けた。
「ねえ・・・。何故、トウジはエヴァに乗るの?」
「な、何やっ!?い、いきなりっ!!?」
2人の視線に気づいて刹那だけ苦笑した後、シンジは2人を敢えて無視してトウジへ話しかけ、トウジが驚きに体を過剰なまでにビクッと震わす。
「解っていると思うけど、今回の作戦成功率は上がったとは言えどもかなり低い。
 もしも、少しでも怖いと感じ、一死百殺の覚悟がないのなら、このエレベーターを降りずに引き返した方が良い。それも1つの勇気なのだから」
その反応に今度は苦笑を消さず、トウジの作戦前の緊張を見破っているシンジは、トウジの瞳を真っ直ぐに覗き込みつつ作戦参加の辞退を勧める。
実を言うと、トウジだけは戦闘前特有の緊迫感を感じ、一見して落ち着いている様に見えるが、その真は全く落ち着いていなかった。
エレベーターへ乗って以来、組まれた腕の左手の人差し指は貧乏揺すりの様に右腕をしきりに叩き、先ほどの発言も緊張に耐えかねてのもの。
確かにトウジは実戦経験がたった1回だけとは言えどもあるが、前回の戦闘は今回とは違って目まぐるしい事態に緊張する間もなく出された戦場。
しかも、トウジは初の実戦で大ダメージを受け、その時の事が毎晩の悪夢となって繰り返され、本当の意味で未だダメージを克服していなかった。
「何を言うねんっ!!わしはちっとも怖かなんかないでっ!!!せやから、引き返しもせえへんっ!!!!」
「そうかい?なら、良いんだけど・・・。」
しかし、トウジは宿敵のシンジの前で弱音を吐く事など出来ず強がり、シンジが唾を飛ばして怒鳴るトウジの予想通りの反応に苦笑を深める。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
それでも、シンジの説得に覚悟を決め、トウジは戦いに表情と気を引き締め、レイとアスカとカヲルの表情と気も付加価値として引き締まった。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         チィィ~~~ン♪
エレベター内に戦闘前特有の緊迫感が漂い漲り、静寂の中にエレベーターの到着を知らすチャイムが鳴る。
ウィィーーーン・・・。
「さあ、みんな・・・。覚悟が良いなら逝こうか?」
そして、エレベーターの扉が開き、シンジを先頭にチルドレン達は数少ない残った整備員達が敬礼して左右に列び作る花道を進んで行った。


「・・・あれ?」
第三新東京市への道のりを走る2ドアの黒い軽自動車、田舎道の景色をぼんやりと眺めていたマユミが、ふと疑問を感じて怪訝そうに首を傾げた。
「んっ!?どうした?」
「変だと思いません?さっきまであれほど車が通ってたのに、ここ30分くらいの間ずっと1台の車もすれ違わないなんて・・・。」
「そう言えば、そうだな。確かに変だ・・・。もしかして、何かあったのかも知れん」
ハンドルを握る男性はマユミの疑問に同意して頷き、先ほどまで文庫本を読んでいたマユミの為に消していたラジオのスイッチへ手を伸ばす。
男性の名は『山岸タケシ』、その名字で解る通りマユミの父親であり、太い黒縁の眼鏡とオールバックにさせた髪が知的さを漂わすナイスミドル。
ちなみに、マユミはボタン前留めの黒いノースリーブワンピース姿、タケシは水色の半袖シャツに黒のズボン姿。
ピッピッィィーーーッ!!
「・・・ますます変だな。警察ではなく、戦自が検問をしているなんて・・・・・・。」
だが、それよりも早く前方で甲高い笛の音が鳴り、慌ててタケシが前方へ注意を向けると、戦自のジープが横置きで上り線道路を封鎖していた。
コン、コンッ!!
「これより、先は封鎖中だ。Uターンして引き返しなさい」
「一体、何があったんです?」
「あなたが知る必要はない。今すぐ、Uターンして引き返しなさい」
車をジープ前に停車させると、若い戦自隊員が運転手側窓をノックして叩き、窓を開けたタケシの質問を無視して高圧的に要求だけを伝える。
「国連極東方面軍監査部所属、山岸タケシです。同時に明日付けを以て、特務機関ネルフ・ネルフ本部監査部所属でもあります。
 この先が封鎖中と言う事は第三で何かがあった証拠。なら、私にもそれを知る権利があると思うのですが教えては頂けませんか?」
タケシは仕方ないと溜息をつきつつズボンの後ろポケットを探り、財布から取り出した身分証を戦自隊員へ突き出した。
「えっ!?・・・あっ!!?こ、これは失礼しましたっ!!!!山岸三佐・・・。いえ、山岸少佐っ!!!!!」
「いえいえ、あなたは任務に忠実であっただけ。謝る必要なんてありませんよ。それより、質問に応えて貰えませんか?」
「はっ!!本日0800を以て、特務機関ネルフは特別宣言『D-17』を発令っ!!!」
戦自隊員はタケシの身分証を確認して驚きにギョギョギョッと目を見開き、慌てて背筋をシャッキーーンッと伸ばして最敬礼。
「ディ、D-17っ!?」
「はっ!!その為、第三新東京市への陸路は全面封鎖っ!!!地域住民には半径50キロ以上の避難義務が発生していますっ!!!!」
「なるほど、それでか・・・。解りました。では、私達も引き返しますのであなた方も気を付けて下さい」
「はっ!!ありがとうございますっ!!!山岸少佐もお気を付けてっ!!!!」
その豹変ぶりに苦笑するが、タケシも道路封鎖の理由を知って驚きに目を見開き、慌てて車をUターンさせるべくギアをバックに入れる。
「・・・と言う事だ。マユミ」
「どういう事なんですか?」
「訳はあとだ。とにかく、今はここを少しでも遠くへ離れるのが先決・・・。」
そして、1人だけ訳が解らずキョトンと不思議顔のマユミを放って、タケシが助手席に左手を付いて後方確認に後ろを振り返ったその時。
ガッシィィーーーンッ・・・。ガッシィィーーーンッ・・・。ガッシィィーーーンッ・・・。ガッシィィーーーンッ・・・。
「だ・・・って、んっ!?何だ?」
道路先にある曲がり角の遥か向こう側から何か重く響く音が届き、タケシが思わず何事かとアクセルを踏むのを止めて前方へ振り向き戻る。
ガッシィーーンッ・・・。
            ガッシィーーンッ・・・。
ガッシーンッ・・・・・。
            ガッシーンッ・・・・・。
ガッシンッ・・・・・・。
            ガッシンッ・・・・・・。
その音は断続的に響きながら、こちらへ確実にゆっくりと近づき、終いには音に合わせて大地が微弱に揺れ始めた。
ガシンッ、ガシンッ・・。
            ガシンッ、ガシンッ・・。
ガシッ、ガシッ・・・・。
            ガシッ、ガシッ・・・・。
ガシッ、ガシッ、ガシッ。
            ガシッ、ガシッ、ガシッ。
マユミが言いしれぬ不安に右手でタケシの左腕を掴み、タケシがマユミを安心させるべく右手をマユミの右手の上に重ね置いた次の瞬間。
ガシッ、ガシッ、ガシッ・・・。ガシィィーーーンッ!!
「「「「「っ!?」」」」」
曲がり角先の山裾より角の生えた紫の巨人が現れ、その圧倒的な巨大さにこの場の全員が思わず身を竦めて驚愕に目を最大に見開いた。
『おや、山岸さんじゃないか?いやいや、こんな所で会うなんて奇遇だね』
「・・・や、山岸少佐。お、お知り合いですか?」
「い、いや・・・。マ、マユミの知り合いか?」
「い、いいえ・・・。は、初めて見る方です」
すると紫の巨人もマユミ達に気づいたらしくこちらへ向かって手を振り、その愛嬌たっぷりな巨人の姿に全員が驚きから我に帰って茫然と目が点。
『初めてだなんて酷いな・・・って、ああっ!!そうか、そうだよね。この格好で解るはずもないか・・・。今からそっちへ行くよ』
「・・・あ、あれがエヴァンゲリオン?」
「ど、どうしたんだ?・・・こ、故障か?」
「な、何だか・・・。す、凄く人間臭いロボットですね」
その上、紫の巨人はマユミ達の様子を怪訝そうに首を傾げた後に右拳で左掌を叩き、全員が全員とも顔を引きつらせて大粒の汗をタラ~リと流す。
プシューー・・・。シャコンッ!!
「おっ!?あれがパイロットか?」
皆が茫然とする中、道路に片跪いた紫の巨人は首筋から白く細長い筒を排出させ、タケシがその白い筒から出てきた少年を目ざとく見つける。
「えっ!?何処、何処?」
「ほら、あそこ。首筋から出ている細長い筒があるだろ?」
「はい・・・・・・って、あっ!?」
マユミはタケシの指さす先へ視線を向け、ウインチワイヤーを使って地上へ降りてくる見覚えのある少年の姿を見つけてビックリ仰天。
「どうしたんだ・・・って、何をやってるんだ?マユミ」
(ど、どうして、シンジ君が・・・。ま、まだ、心の準備も出来てないのに・・・・・・。)
タケシはやけに大きく驚くマユミを怪訝に思い、視線だけを少年からマユミへ移して思わず茫然と目が点になるも束の間。
何故ならば、マユミはバックミラーを己の方へ向け、焦った様子で髪を手櫛で梳かしつつ、顔を左右に振り向けて己をチェックしてたからである。
「んっ!?ああっ!!?なるほど、なるほど・・・。もう、マユミもそんな年頃か・・・・・・。」
「・・・な、何ですか?そ、その変な顔は・・・・・・。」
その姿に恋する乙女特有の物を漠然と感じ、タケシはしたり顔でニヤニヤと笑い始め、マユミがタケシの笑い声に反応して動きをピタリと止めた。
「いやいや、第三へ引っ越すと言ったら、珍しく喜ぶし・・・。住所や転校先まで指定するから疑問には思っていたが、そう言う事だったのか」
「ち、ち、ち、ち、違いますっ!!」
タケシは声を上擦らせまくって問うマユミにニヤニヤ笑いを深め、何やら1人納得して嬉しそうに何度もウンウンと頷く。
「別に隠さなくたって良いじゃないか。むしろ、父さんは嬉しいくらいだ。但し、まだ中学生なんだからケジメだけはちゃんと付けるんだぞ?」
「な゛っ!?・・・・・・ち、ち、ち、ち、違うって言ってるじゃないですかっ!!」
マユミはタケシが頷く度に顔を1段階づつ紅く染めてゆき、タケシの最後の言葉に全くの謎の想像を働かせて耳まで真っ赤っかに染める。
「おっ!?今の間は何だ?もしかして、マユミ・・・。お前、まさか、まさかとは思うが・・・・・・。」
「な、な、な、な、何を言ってるんですかっ!!シ、シ、シ、シ、シ、シンジ君とはまだそんなんじゃありませんっ!!!」
「ほう、彼の名前は『シンジ君』と言うのか・・・。しかも、『まだ』と言う事は『いつかは』と思っているんだな?」
久々に聞く元気なマユミの怒鳴り声に堪えるどころか嬉しくなり、タケシは上機嫌にますますニヤニヤと笑って尚もマユミを茶化す。
「お、お、お、お、お父さんっ!!」
「はいはい・・・。それより、良いのか?さっきからシンジ君が呼んでるぞ?」
「えっ!?」
マユミは興奮のあまり必死の形相で怒鳴り、タケシの指摘に助手席窓へ視線を向けると、そこにあったのは困り顔で苦笑を浮かべるシンジの顔。
「山岸さん、久しぶりだね。元気だった?」
「は、はいっ!!そ、それはもうっ!!!シ、シンジ君はお元気で・・・。」
思わぬ醜態を見られたマユミは、手巻きペダルの助手席窓を焦り急ぎ開け、シンジの挨拶に応えて嬉しそうな笑顔で勢い良く立ち上がった。
ガゴンッ!!
「いっ痛ぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!!」
しかし、車内で立ち上がれば当然の事ながら天井へ頭をぶつけ、マユミは涙目となって痛む頭を両手で抱えて席へ蹲り逆戻り。
「・・・だ、大丈夫?」
「マ、マユミ・・・。う、嬉しいのは解るが、舞い上がり過ぎだぞ?」
シンジは大粒の汗をタラ~リと流して顔を引きつらせ、タケシも娘の無様すぎる姿に大粒の汗をタラ~リと流して顔を引きつらせた。


「・・・ったく、あんた達も物好きね。ここは私1人で良いって言ったのに・・・・・・。」
いつもの円滑さがなく手間取りを感じる報告が飛び交う発令所をグルリと見渡し、やれやれと深い溜息をつきながらも嬉しそうに微笑むミサト。
何故ならば、ネルフ職員達へ1時間ほど前に最終避難勧告を与えたにも関わらず、様々な部署から50名ほどの有志が発令所へ集ったからである。
その為、普段は若い女性職員が主な眼下のオペレーター席が、今日だけは黒服や白衣、整備員作業つなぎだったりと色とりどり。
「いえ、これも仕事ですから」
「そうっス。子供達だけを危ない目に遭わせられないっスよ」
「あの子達は大丈夫。万が一の事があってもATフィールドが守ってくれるわ・・・。エヴァの中が世界中の何処よりも一番安全なのよ」
日向と青葉は作業を行いながら苦笑を浮かべて応え、ミサトは思わず目頭が熱くなるのを感じ、口元に微笑みを残して右掌で目線を隠す。
「・・・目標を最大望遠で確認っ!!」
「距離っ!!およそ、25000っ!!!」
だが、使徒は感傷に浸る暇など与えず、ネルフ本部を目指して遂に落下を始め、青葉と日向の報告と共に使徒の姿がモニターに映し出された。
「お出でなさったわね・・・。エヴァ全機、スタート位置っ!!」
『『『『『了解っ!!』』』』』
ミサトは表情をキリリと引き締めて檄を飛ばし、第三新東京市を囲む様に配置されたエヴァ各機が一斉に短距離走のクラウチングスタイルをとる。
ちなみに、このエヴァ各機の配置場所の設定理由はMAGIの計算によるものではなく、ミサトの女の勘による何ともアバウトなもの。
「もう1度、作戦を伝えるわ。シンジ君の作戦を要に最初の作戦をその補足として行います。
 そして、目標は光学観測による弾道計算しか出来ない為、MAGIがあなた達を距離10000まで誘導します。
 シンジ君は自分のタイミングでスタート。その後は各自の判断で行動して・・・・・・。あなた達に全て任せるわ」
「使徒接近っ!!距離およそ20000っ!!!」
「では、作戦開始っ!!以降の作戦指揮権を初号機パイロット・碇特務二尉に委託しますっ!!!」
ミサトはこれまで何度となく伝えた作戦内容を改めて伝え、日向の報告に運命をチルドレン達へ全て託した。


「碇特務二尉、承りました・・・。さあ、逝くよ?」
いつもならここで冗談の1つも言うところだが、シンジも今日ばかりは表情をキリリと引き締め、4人がシンジの確認に無言で頷く。
プシュッ!!
「スタートっ!!」
それを合図にエヴァ各機のアンビリカルケーブルが切断され、初号機を除くエヴァ各機が使徒落下地点を目指してスタート開始。
「・・・キャっ!?」
ドッシィィーーーンッ!!
だが、何やら腰が定まらず下半身に力が入らないアスカは、弐号機を直進させる事が出来ず、何度か蛇行を繰り返した挙げ句に蹌踉けて転倒。
「アスカっ!?」
「だ、大丈夫っ!!や、やれるわっ!!!」
すぐさまアスカは弐号機を立ち上がらせるが、やはり腰が定まらず立ち上がる前に力が抜けて尻餅をついてしまう。
「OKっ!!期待してるっ!!!(やっぱり、作戦前にシたのはまずかったかな?お互い、ちょっと激しかったし・・・。
 まっ・・・。それだけ、僕も、アスカも不安だったって事か・・・。僕もまだまだだね。死ぬ事も慣れたつもりだったのに・・・・・・。)」
その様子に後悔の念にかられるも今は反省する暇などなく、あとの心配はアスカ自身に任せ、シンジも初号機を踏み切らせてスタート開始。
余談だが、作戦前に何をシたのか、何がちょっと激しかったのかは全くの謎であり、シンジが何を後悔しているのかも全くの謎である。
ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシンッ!!
(それはともかく・・・。今回は最初から少し本気を出させて貰うよ)
一呼吸を置き、シンジが愉快そうに口元をニヤリと歪め、目を瞬かせて左の瞳をルビー色へ変化させた途端。
「まずは2速っ!!」
ガシ、ガシ、ガシ、ガシ、ガシ、ガシ、ガシ、ガシ、ガシ、ガシ、ガシッ!!
初号機から強烈なオレンジ色の光が放たれ、初号機の駈ける速度が急速に一回りほど増した。
「続いて、3速っ!!」
ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガッ!!
そして、持続的に放たれる光は更に一回りほど増した初号機の駈ける速度に追いつけず、残像を後方へ残して翼の如く長く長く伸びてゆく。
「そして、4速っ!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
その姿はまるで駈けるより跳ぶ、跳ぶよりも飛ぶに近く、初号機通過に1テンポほど遅れ、音速を超越する速度にソニックウェーブが巻き起こる。
おかげで、山は地肌を削られ、森はボウズとなり、道路はコンクリートが粉砕され、初号機が通った跡はペンペン草も生えていない酷い有り様。
一方、他の4機は全力疾走で走りながらも出来るだけ被害を抑えるべく、ハードル越えの要領で電線を跳び越すなどそれなりに気を使っている。
『距離12000っ!!』
(くっ・・・。予想よりも早いっ!!みんなはっ!!?)
日向の報告と共に落下摩擦熱で赤く燃える使徒が肉眼で見え、シンジは拳大となった使徒を睨みつけた後、皆の行方を探して前方へ視線を向けた。


「レイちゃんっ!!」
落下するエネルギー熱に周囲の雲が瞬時に蒸発して青い輪を作り、その中心から中央の巨大な目玉模様を覗かす使徒。
ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシンッ!!・・・ガッ!!!
「「フィールド全開っ!!」」
レイは前方より迫るカヲルの呼びかけに応えて頷き、交差した零号機と四号機はバックステップで背中合わせとなってATフィールドを展開。
「さあ、これからが本番だ。しっかり、頼むよ?」
「・・・あなたこそね」
両機から放たれたATフィールドはお互いに干渉して突風を生み、周囲の家屋を吹き飛ばした上に大地を剥いて土の地肌を露出させてゆく。
「お、思ったより大きいね。こ、これは・・・。」
「・・・も、問題ないわ」
「でも、僕は負けられない。この戦いも、シンジ君についてもね」
「・・・それはこっちのセリフ」
レイとカヲルは上を見上げ、頭上の空一面を覆う使徒の巨大さに圧倒されて怯むも、お互いを励まし合って愛機の両腕を大きく掲げ広げた。
「ねぇ、こんな時に何だけど・・・。1つ、聞いて良いかな?」
「何?」
「気のせいかな?・・・レイちゃんって、僕へ妙に冷たくない?」
「気のせいよ・・・。」
すると2人の高まる戦意に応えてATフィールドの威力が増し、同時に両機を中心として凄まじいハリケーンとも呼べるつむじ風が巻き起こる。
バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ!!
「待たせたねっ!!カヲルさんっ!!!」
だが、その幾層もの風の壁をぶち破ってオレンジ色の光を身に纏う初号機が現れ、カヲルの元にサンドストームの走る通信ウィンドウが開かれた。
「シンジ君、酷いじゃないか。ちょっと遅刻だぞ?」
「・・・えっ!?」
カヲルがシンジの声に強ばっていた顔をフッと緩めて微笑み、レイが愕然と目を大きく見開き、零号機を後ろへ勢い良く振り向かせた次の瞬間。
「フフ、ごめんよ。・・・ところで、準備は良いかい?」
「勿論さ。僕がシンジ君を拒むはずがないだろ?」
「それじゃあ・・・。1、2のっ!!」
「「3っ!!」」
四号機が初号機へ向かって片跪き、踏み切り跳んだ初号機の右足を差し出し組んだ両掌に乗せ、初号機を全身のバネを使って使徒へと放り投げた。
ブシュッ!!ブシュ、ブシュ、ブシュ、ブシュ、ブシュッ!!!
「くうっ!?」
その際、四号機の全身の筋肉に凄まじい負荷がかかり、筋肉が悲鳴をあげて体各所から体液を勢い良く吹き出させ、カヲルの顔が苦痛に歪む。
「フィールド最大出力ぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!!
 うっりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
しかし、カヲルを気使う余裕など無く、シンジは初号機の腰を捻ってスピン回転させつつ、放つ光を更に一段と強く輝かせて使徒へ向かって行く。
カキィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーンッ!!
「なんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
無論、使徒とて迫り来る初号機を無策に黙って見ているはずもなくATフィールドを展開させ、両者は上空1000メートルの位置で激突した。


「向こうが落下のエネルギーを利用するなら、こっちはそれを上回る上昇のエネルギーを利用すれば良い・・・。
 こうなる事は解っていたけど・・・。いざ、実際に目の当たりにすると常識を疑う以前に今までの常識を信じられなくなるわ」
初号機がジェットエンジンの様にオレンジ色の光を下方へ噴射して靡かせる光景に茫然となり、大粒の汗をタラ~リと流して目が点なミサト。
しかも、双方の力は拮抗していたはずが、いつしか初号機の力が徐々に勝り、初号機が推進装置もないのに上昇し始めたのだから無理もない話。
「マヤ、解ってるわねっ!!今日という今日は些細な変化も逃さず初号機のデーターを何としてでも取るのよっ!!!」
「で、ですが・・・。あ、あの高度では光学観測だけで精一杯ですよ?」
「だから、こんな時の為に用意していたエントリープラグの計測発信器が有るんでしょうがっ!!」
「そ、それなら・・・。さ、さっきからATフィールドの干渉波でデーターが全く届いていませんよ?」
その常識外れな光景に目を爛々と輝かせ、リツコが興奮を隠せずマヤへ叫ぶが、マヤから返ってきたのは心底に済まなそうな詫びの言葉だけ。
「何て事・・・。ええいっ!!退きなさいっ!!!」
「キャっ!?」
リツコは愕然と目を見開いた後、考えるよりも早くマヤを両手で力一杯に突き飛ばして退け、マヤに代わって自分が空席となった席へ座った。
ドタッ!!
「・・・ひ、酷いじゃないですか。せ、先ぱぁぁ~~~い・・・・・・。」
「フッフッフッフッフッ・・・。届かないなら、届く様にすれば良いのよ」
席から強かに突き落とされたマヤは、崩れ落ちたまま非難の涙目をリツコへ向けるが、興奮にキーボードを叩きまくるリツコには届かない。
「あ、あのぉぉ~~~・・・。も、もしもし?つ、つかぬ事を聞くけど・・・。な、何、やってんの?リ、リツコ・・・・・・。」
「あなた、そんな事も解らないの?・・・決まってるでしょ?国連の全スパイ衛星にハッキングして初号機のデーターを取るのよ」
「な゛っ!?ば、馬鹿な真似は止しなさいよっ!!?」
ミサトは怪しく笑うリツコの横顔に嫌な予感を感じて怖ず怖ずと尋ね、作業に夢中で返事だけを返してきたリツコの意図を知ってビックリ仰天。
「フッフッフッフッフッ・・・。問題ないわ。ネルフは超法規的組織ですもの。・・・そうね。D-17のついでにB-01も発令すれば良いわ」
「な゛っ!?な゛っ!!?な゛っ!!!?な゛っ!!!!?な゛ぁぁ~~~っ!!!!!?
 日向二尉、青葉二尉っ!!乱心した赤木博士を拘束してコンソールから引き離しなさいっ!!!伊吹二尉は国連のシステム回復をっ!!!!」
「「「りょ、了解っ!!」」」
リツコはミサトの忠告など耳を貸さずにキーボードを叩き続け、ミサトはこれ以上の説得は無理と悟り、慌てて現責任者としての責任を発動。
「ちょっ!?や、止めなさいっ!!?じ、時間がないのよっ!!!?
 あ、あなた達、自分が何をしているかが解ってるのっ!?あ、あなた達の行為が科学の進歩を10年も遅らせるのよっ!!?
 そ、そうよっ!!わ、私は間違っていないわっ!!!・・・マ、マヤ、止しなさいっ!!!!あ、あなたも科学者なら解るでしょっ!!!!!」
日向と青葉に拘束されて席から引き剥がされ、リツコは髪を振り乱しつつ半狂乱となって叫び、マヤが両耳に手を当てて己の席へ座った次の瞬間。
『そろそろ・・・。死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
ピシッ!!・・・ピシピシピシピシピシッ!!!
シンジの咆哮が轟いたかと思ったら、初号機が上昇速度を一気に加速させて使徒と共に遥か天空へと瞬時にして舞い上がった。
パリィィィィィーーーーーーンッ!!・・・ザシュッ!!!
『あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!』
初号機によって天空へ引き戻された使徒は、ATフィールドと中央の目玉模様を初号機によって貫かれ、巨大な体躯に巨大な風穴を空けて沈黙。
「青葉君っ!!」
「はいっ!!・・・パターン消失、目標は完全に沈黙しましたっ!!!我々の勝利ですっ!!!!」
シンジの狂った様な笑い声が木霊する中、ミサトがいち早く我に帰って状況を求め、青葉が発令所に戦闘終了を声高らかに宣言した。
「や、やった・・・。や、やったぞっ!!」
「あはははは・・・。やりましたねっ!!私達、勝ったんですよねっ!!!」
「ああっ!!勝ったっ!!!俺達は勝ったんだっ!!!!」
「普段のサードはアレだが・・・。本当、こういう時だけは頼りになるよなっ!!」
「あら、何を言うの?シンちゃんは普段も頼りになるわよ?だから、私はシンちゃんを信じて残ったんだから」
一拍の間の後、1人が勝利を実感して震える声で歓声をあげ、それをきっかけに彼方此方で歓声が起こり、発令所が勝利を喜び合う声で溢れ返る。
「わ、私のデーターが・・・。わ、私のデーターが・・・。わ、私のデーターが・・・・・・。」
「せ、先輩・・・。だ、大丈夫ですよ。こ、この次が有りますって」
反対にリツコは涙をルルルーと流して放心のあまり力無くヘナヘナァ~とその場へ崩れ落ち、マヤが躊躇いがちにリツコの肩へ慰めの手を置く。
パチッ!!
「痛っ!?」
「この次っていつよっ!?いつっ!!?明日っ!!!?明後日っ!!!!?それとも、1週間後っ!!!!!?」
「い、いえ、そこまではちょっと・・・。あ、相手は使徒なんですから・・・・・・。」
「ほら、見なさいっ!!あなた達が私のデーターを・・・。あなた達が私のデーターを・・・。あなた達が私のデーターをぉぉ~~~っ!!!」
しかし、リツコはマヤの手を思いっきり叩き払い退け、体を丸めながら両腕で顔を覆って喚き散らし、見事すぎる駄々っ子ぶりを披露。
「か、葛城さぁ~~ん・・・。」
「マヤちゃん、今はそっとしておいてあげなさい。・・・それより、初号機は?日向君」
マヤは困り果ててミサトへ縋る様な視線を向けるが、ミサトは首を力無く左右に振って深い溜息をつくのみ。
「問題ありません。現在、高度30000を尚も上昇中。上昇速度の計算から高度38000を越えた辺りで落下を始める予定です」
「OK・・・。青葉君、その後の使徒の残骸は?」
「上空の季節風に煽られ、現在は南へ飛ばされています。現時点での落着点の予想は不可能です」
「まっ・・・。良っか。取りあえず、使徒は倒せたんだから、あとは国連にでも任せましょう。・・・日向君、D-17の解除をよろしくね」
「了解しました」
こうして、背水の陣とも言えるネルフ本部自爆すらも決意した決死の戦いは人類側の勝利で幕を閉じた。


「もうちょい右か?・・・いやいや、ちょい左やな。・・・いや、前やろ?・・・んっ!?ちゃうな・・・。気持ち後ろやな?」
前方へ両腕を水平に突き出して上空を見上げながら、辺りを前後左右に駈け回る参号機。
ヒュゥゥーーーン・・・。
            ヒュゥゥーーーン・・・。
ヒュゥゥーーーン・・・。
            ヒュゥゥーーーン・・・。
ヒュゥゥーーーン・・・。
            ヒュゥゥーーーン・・・。
その遥か上空では激戦の英雄である初号機が落下の摩擦熱に全身を真っ赤に染めつつ天地逆さまとなって地上へと帰還中。
ヒュゥゥーーーン・・・。
            ヒュゥゥーーーン・・・。
ヒュゥゥーーーン・・・。
            ヒュゥゥーーーン・・・。
ヒュゥゥーーーン・・・。
            ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーンッ!!
初号機の落下予想地点を見定め、目をクワッと見開かせたトウジが、初号機をキャッチするべく参号機の両腕を大きく広げた次の瞬間。
「よっしゃっ!!ここやっ!!!・・・さあ、来いっ!!!!シンジっ!!!!!」
ドッシィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーンッ!!
初号機がトウジの見定めた地点とはかなりほど遠い位置へ舞い落ち、その衝撃に初号機を中心として直径1キロ級のクレーターが出来あがった。
「おお、すまん、すまん・・・。そっちやったか?」
「・・・ト、トウジ。ま、まさかとは思うけど・・・・・・。わ、わざとじゃないよね?」
「何を言うねんっ!!そんなはずないやろっ!!!お前、わしがそないな事をする男だと思っとんのかっ!!!!シンジっ!!!!!」
だが、トウジは全く悪びれた様子もないどころか、通信ウィンドウを開いて白い疑惑の眼差しを向けるシンジへ心外なと怒鳴りまくり。
「そ、そうかい・・・。な、なら、良いん・・・だけ・・・ど・・・ね・・・・・・。」
バタッ・・・。
(ふっ・・・。シンジ、お前は戦う前にわしへ何故エヴァに乗るかと聞いたな?
 なら、教えちゃる。わしはお前を殺る為に参号機のパイロットになったんや。大事な事を思い出させてくれて・・・。ホンマ、ありがとな)
挙げ句の果て、シンジが気絶と共に通信を切ると、トウジは邪悪そうにニヤリと笑い、シンジの冥福を祈って初号機へ対して拝むも束の間。
「このすかたぁぁぁぁぁ~~~~~~んっ!!」
ドゲシッ!!
「ぶべらっ!?」
参号機は赤鬼の放ったミサイルキックを後頭部に浴びて見事なくらい吹き飛び、沈黙したトウジはシンジと同じ世界へと旅立った。


「・・・ったく、こいつときたらっ!!」
「痛っ!?何すんねんっ!!!惣流っ!!!!」
「まあまあ・・・。アスカ、良いじゃないか。こうして、全員とも無事だったんだからさ」
「そうだね。僕は腕がまだちょっと痛いけど・・・。」
チルドレン達はプラグスーツから普段着へ着替え終え、本日は稼働人員が少ない為に発令所でパイプ椅子に座っての反省会。
ところが、作戦成功低確率よりの生還による高揚感からか、チルドレン達は反省会開始早々に無駄口を叩き合って反省会に全くならない有り様。
もっとも、レイだけは作戦終了時より一言も口を開かず、今はやや俯き加減になって先ほどからシンジへ視線をしきりに向けていた。
「ん~~~・・・。ラチが開かないわね。これは・・・・・・。」
「やっぱり、明日にした方が良いんじゃないですか?今日はさすがに無理ですよ」
ミサトは何度となく注意しても静まらないチルドレン達に苦笑を浮かべ、司会進行役の日向も苦笑を浮かべてミサトへ反省会の延期を進言する。
「そうよね。私だって、何か、こう・・・。体の内から自然と盛り上がってくる物があるって言うか。仕事なんかする気分になれないしねっ!!」
(そ、それはそれで困るんですが・・・。い、良いですよ。あ、貴女の為なら・・・・・・。)
応えてミサトは頷くと、日向へ右腕の力こぶを見せて上機嫌に笑い、日向はミサトの応えに顔を引きつらせて心の中で涙をルルルーと流す。
余談だが、ミサトはこの後に自分の言葉を実践して家へ帰り、戦後とD-17における残務処理を放棄。
おかげで、日向は現時点で昨々日の夜勤より始まり、最低でも翌朝にミサトが出勤するまで続く、連続50時間耐久勤務レースの出場が確定した。
「(マ、マコト・・・。お、お前、本当にそれで良いのか?)・・・って、あっ!?電波システム、回復。南極の碇司令から通信が入っています」
「・・・お繋ぎして」
青葉は日向に同情して顔を引きつらせるも、現れたディスプレイの点滅メッセージに表情を引き締め、ミサトも青葉の報告に表情を引き締める。
「申し訳ありません。私の勝手な判断で初号機と四号機を破損してしまいました。責任は全て、この私に有ります」
『問題ない・・・。使徒殲滅は我々の使命だ。むしろ、その程度の被害は幸運と言える。葛城三佐、良くやってくれた』
「はっ!!ありがとうございます」
そして、今作戦の独断を詫びるが、通信ウィンドウのゲンドウは気にした様子なく功を労い、ミサトが通信ウィンドウへ向かって敬礼を返す。
もっとも、モニターの通信ウィンドウに映像は映っておらず、音声だけで代わりに『SOUND ONLY』の文字が映っている。
『ところで、そこに初号機パイロットはいるか?』
「何だい?お礼なら別に良いよ。まあ、父さんがどうしてもって言うのならキャッシュで貰えるかな?」
「こ、こらっ!?シ、シンジ君っ!!?」
続いて、ゲンドウはおもむろにシンジへ呼びかけ、シンジがクスクスと笑いながら応え、ミサトがシンジの不遜な態度に焦った次の瞬間。
『すぅぅぅぅぅ・・・。よくもやったなっ!!シンジぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~っ!!!』
「「「「「「「「・・・へっ!?」」」」」」」」
息を深く吸った音が聞こえたかと思ったら、ゲンドウが凄まじい怒号を轟かせ、シンジは勿論の事、その場にいる全員が思わず茫然と目が点。
ちなみに、リツコとマヤはこの場に居らず、マヤは失意に己の執務室へ引き籠ってしまったリツコを慰めている最中。
『貴様のせいでっ!!貴様のせいでっ!!!貴様のせいでぇぇ~~~っ!!!!
 一体、お前は俺のシナリオをどれだけ邪魔したら・・・。プツッ、ガガガガガ・・・。ザーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・。』
ゲンドウの怒号は尚も続くが、その途中で通信ウィンドウが唐突に閉じてしまい、沈黙の中にサンドストームから発せられるノイズ音だけが響く。
「・・・つ、通信途絶」
「え、ええっと・・・。い、今のは誉め言葉じゃないよね?・・・ど、どうして?」
一拍の間の後、青葉が己の職務を果たすべく慌てて我に帰り、続いて我に帰ったミサトがシンジへ聞かずにはおれず皆の心を代弁して尋ねる。
「さあね。・・・こう言っては何ですが、我が父ながら身内の僕にも父さんの考える事は時々解りませんから」
「そ、そう・・・。た、大変ね・・・・・・。」
応えてシンジは失笑して肩を竦め、ミサトはまるで他人事の様に父親を評価するシンジに顔を引きつらせて大粒の汗をタラ~リと流した。


「くそっ!!」
ドガッ!!
ただの粗大ゴミとなった通信機に腹を立て、忌々し気に右拳をコンソールへ思いっきり振り落とすゲンドウ。
バタンッ!!
「碇、何をしているっ!!喋っている暇があったら、お前も手伝えっ!!!ここで死んだら全てが水の泡だぞっ!!!!」
同時に背後の扉が勢い良く開き、血相を変えた冬月が怒鳴り現れた。
「ああ、解っている・・・。
 ・・・って、ふ、冬月?お、お前・・・。そ、その格好はなんだ?に、忍者の真似か?」
ゲンドウは面倒臭そうに振り返りながらサングラスを押し上げるが、冬月の姿を見るなり、思わずサングラスをズリ落としてビックリ仰天。
何故ならば、冬月はブリーフ1枚の姿で上着とズボン、シャツを頭に被り、それ等を厳重にベルトでくくり付け縛っていたからである。
ギィィィィィ・・・。ザッパァァーーーンッ!!
「ぬうっ!?いかんっ!!!こうしちゃおれんっ!!!!・・・お前も早く来いっ!!!!!今は猫の手も借りたいんだからなっ!!!!!!」
しかし、冬月は船が激しく傾き揺れ、波が叩き合う音に反応して尚も血相を変え、ゲンドウの質問を無視してブリッチから駈け出て行く。
ゴロゴロゴロゴロゴロッ!!ザパンッ!!!ザッパァァァァァーーーーーーンッ!!!!
「副司令、大変ですっ!!第6格納庫に穴が開き、水がドンドンと浸水していますっ!!!最早、この船はダメですっ!!!!」
そして、冬月がブリッチから外へ一歩出た途端、雷鳴が轟き、横殴りの暴風雨が吹き荒れ、大津波が船を襲う地獄絵図が目の前に広がる。
実を言うと、第三新東京市の遥か上空で殲滅された使徒は季節風やら、貿易風やら、偏西風に煽られた後、引力極点の南極の海へ導かれて落下。
その結果、活動が停止したとは言えども、それなりの質量を持つ使徒によってインパクト衝撃が生まれ、現在の南極はご覧の通りの有り様。
絶妙な計算で海を区切り、ロンギヌスの槍を露出させていた堤防は当然の事ながら決壊してしまい、槍の引き上げ作業は即座に中止。
それどころか、津波によって幾艘もの船が沈み、残った数少ない船もそれぞれが散り散りとなって行方が解らない始末。
つまり、ゲンドウ達は早い話が遭難したと言う事であり、コンパスも、通信も役に立たず、推進力も全く効かない荒ぶる海を漂っているのである。
「何を言うっ!!諦めたら、そこで終わりだっ!!!希望を持てっ!!!!我々は必ず日本へ帰るのだっ!!!!!」
「は、はいっ!!」
「ならば、私に続けっ!!人間、やれば出来る事を見せてやるっ!!!」
「は、はいっ!!」
だが、怯む事なく絶望感が蔓延する部下達へ檄を飛ばし、冬月が手近にあったバケツを片手に被害を受けた第六格納庫へ向かおうとしたその時。
ザパ、ザパ、ザッパァァァァァーーーーーーンッ!!
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~っ!!」
船の縁に叩き付けられた津波が真横から襲い、冬月は波にさらわれて荒れ狂う南極の海へダイビング。
「副司令っ!?・・・おい、お前っ!!!この紐で俺を縛れっ!!!!俺が副司令を助けに行くっ!!!!!」
「し、しかし、それでは二尉にも危険がっ!?」
「馬鹿野郎っ!!副司令の言葉を聞いてなかったのかっ!!!諦めたら、そこで終わりだっ!!!!」
「は、はいっ!!わ、解りましたっ!!!」
「そう、副司令ほどの人物をここで死なせてはいかんのだっ!!その為には俺がどうなろうとも構わんっ!!!」
すぐさま部下の1人が腰に命綱の縄を巻き付け、冬月の身を案じて荒ぶる南極の海へその身を投じた。
余談だが、冬月のこの時の不屈な精神と見事な指揮ぶりは、この場に居合わせた作戦部を中心としたネルフ職員達の心をガッチリとキャッチ。
その後、この者達によって冬月の活躍がミサトへ伝えられ、作戦部がより一層に副司令派としての結束を固める事となったのは言うまでもない。
反対に何もしようとせずブリッチに居続けたゲンドウへ対しては反感が生まれ、反司令派として技術部との派閥争いの溝を深めてゆく事となる。
「うわっぷっ!!・・・こ、こんな高濃度の海水に浸かっては、私の髪が、毛根がぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!!!
 のおおおおおおおおおっ!!1本、2本、3本、4本、5ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~んっ!!!」
一方、ようやく海面へ浮き出てきた冬月は、我が身よりも我が頭を心配して魂の咆哮をあげ、衣服で守る頭のベルトの締め付けを目一杯に強めた。


「良いのかい?僕の所なんかに来て・・・。」
「どう言う意味だい?僕が来ては迷惑だったかな?」
壁や床は大理石調に白く、ライオンが浴槽へお湯を注ぐ、個人邸でありながら超リッチな10畳の広さもある渚邸のバスルーム。
「そうじゃないけど・・・。」
「・・・けど?」
浴槽はバスルームの半分を占めているにも関わらず、浴槽角隅に座るシンジへ背を保たれ、わざわざシンジとくっつき合っているカヲル。
余談だが、2人はつい10分ほど前にお風呂へ入ったばかりであり、本来は肩まで浸かれるお湯が今は腰までしか届いていない状態。
しかも、お湯はまだぬるま湯なのだが、既に2人の肌は桜色に染まり、全身からは大粒の汗が滴り落ちてと何故だかは全くの謎な状態。
更に余談だが、2人の右手側の壁は一面が一枚貼りのスモークガラスとなっており、夕陽に赤く染まる第三新東京市を一望する事が出来る。
「てっきり、僕はレイちゃんのところへ行くと思っていたから・・・。」
「どうして、そう思うんだい?」
「・・・彼女、納得していない様だよ。あの時、彼女ではなく、僕を選んだ事に・・・。帰る時も凄い目で睨まれたからね」
「綾波を選ばなかったのは簡単な理由さ。綾波は僕に対して背中を向け、カヲルさんは僕に対して向かい合っていた・・・。ただ、それだけさ」
カヲルの質問を苦笑で応え、この話題はまずいと悟り、シンジが話題を変えるべく浴槽縁に置いていた両手をカヲルの胸へ伸ばした次の瞬間。
「彼女もそれは解っているさ。・・・でも、感情が付いてゆかない。だから、僕は君がレイちゃんの元へ行くと思ったんだけどな」
「だからって、僕が綾波の所へ行く理由なんて・・・って、いぎっ!?」
素早く振り返ってシンジと向き合ったカヲルが、シンジの命より大事な物を右手で思いっきり握り締め、シンジがあまりの激痛に言葉を止める。
「フフ・・・。僕が知らないとでも思っているのかい?」
「・・・な、何が?」
「シンジ君・・・。僕以外にも、こういう仲の人がたくさんいるよね?」
「こ、こういう仲って・・・って、はううっ!?」
「こうして、お互いに裸でお風呂へ入れる仲の女の子達の事だよ」
「そ、それは・・・。カ、カヲルさんの気のせいじゃないかな・・・って、うぐっ!?」
満面のニコニコ笑顔で迫るカヲルの追求を何とか誤魔化そうとするが、その度にカヲルの握力が強まり、シンジは絶句して汗をダラダラと流す。
「レイちゃんにアスカちゃん、葛城三佐と伊吹二尉・・・。昨日の様子から洞木さんも怪しいね。
 まあ、怪しいのは洞木さんだけに限った事じゃないけど・・・。。
 永沢さんに森原さん、それに石尾さん、四石さん、山田さん、土居さんとまだまだ居るね。僕等のクラスだけでも・・・。」
「な、何を・・・。カ、カヲルさん・・・。き、君が何を言っているのか解らないよ・・・。カ、カヲルさん・・・・・・。」
挙げ句の果て、全くの謎方面に心当たりのある名前がカヲルの口から次々と紡ぎ出され、シンジは視線をカヲルと合わせられず顔を背ける。
「・・・本当にぃ~~?」
「ほ、本当さ・・・って、はひらほっ!?」
ならばとカヲルは左手でシンジの顎を持って強引にシンジの顔を自分へ向かせるも、シンジが視線を逸らしたので最大出力のお仕置きを実行。
「でも、良いのさ・・・。僕が『自由』な様に僕は君を縛る事が出来ないからね」
「えっ!?・・・んんんっ!!?」
その反面、カヲルは己の運命を呪うかの様に切なく呟き、左手をシンジの首へ回して引き寄せ、真実を聞くまいと唇でシンジの唇を塞いだ。
「・・んっ・んんっ。」
           「んっ・・んんっ・。」
「・んんんっ・・・。」
           「んんっ・・んんんっ」
「・・んっ・んんっ。」
           「・んっ・んっ・・。」
シンジもカヲルのキスに応えて左手をカヲルの首へ回して更にカヲルを引き寄せ、2人の口から漏れる甘い吐息がバスルームに響き渡る。
その間、カヲルの右手はお湯に浸かったまま右肩が上下に激しく揺さぶられ、入浴剤で乳白色に濁るお湯の中で何が起こっているかは全くの謎。
「んんっ・んっ・・。」
           「んんっ・・んんんっ」
「・・んっ・んんっ。」
           「・んんんっ・・・。」
「・んっ・んっ・・。」
           「・・んっ・んんっ。」
どちらともなく唇を名残惜しそうに離して長いキスを終え、カヲルが両手でシンジの頬を持ち、シンジの瞳を覗き込んで妖艶に微笑む。
「・・・だけど、本気はダメだよ?浮気は許すけどね」
「き、肝に命じておきます・・・。は、はい・・・・・・。」
その強い眼差しを受けて蛇に睨まれた蛙状態となり、シンジはとてもじゃないが首を横に振れず、汗をダラダラと流しながら躊躇いがちに頷く。
「お願いだよ・・・。んふっ!?んんんっ・・・・・・。」
「本当にどうしたんだい?今日はやけに積極的だね?」
するとカヲルは膝立ってシンジの首へ両手を回した後、何故だか体をビクッと震わせ、背を弓なりに反らしつつ腰をゆっくりと落とし始めた。
「んっはぁぁぁぁぁ~~~~~~・・・。だって、そうだろ?昨日も、今日も、アスカちゃんばっかりで狡いじゃないか」
「はははははははははは・・・。」
一拍の間の後、沈降を止めたカヲルが深い吐息を漏らして力無くシンジへ寄りかかり、シンジが問いかけたカヲルの応えに乾いた笑い声を響かす。
重ねて言うが、お湯は入浴剤によって濁っており、このカヲルの不思議な現象は何によってもたらされたのかは全くの謎。
「ところで・・・。」
「な、何だい?」
一息をついたカヲルは呼吸を整えてシンジの耳元で囁き、シンジはどんなお小言が今度は飛び出すのだろうと戦々恐々の思い。
「・・・彼女、僕と一緒だろ?」
「んっ!?ああ・・・。そうだよ」
だが、カヲルの口調に鋭さが帯び、シンジはカヲルの言わんとする『彼女』がレイだとすぐに気づいて真剣な面もちで頷いた。
「なら・・・。どうして、彼女達を救ってあげないんだい?僕達の時の様に・・・・・・。
 ・・・君には聞こえているはずだ。地下から聞こえてくる魂の冒涜に嘆くあの悲しい悲鳴が・・・・・・。」
「僕はね・・・。待っているんだよ」
「・・・待っている?」
カヲルは自分を救う一方でレイを救わぬ理由を問い、シンジは応えて静かに目を瞑り、本当の14歳だったあの頃の悪夢を瞼に思い起こす。
「そう、綾波自身が助けを求めるのを・・・。そして、自分自身の過去に負けない強さを持つ事を・・・・・・。
 でも、それは建前・・・。本当は怖いんだよ。僕は・・・・・・。こうして、目を瞑るとあの時の光景がまざまざと今でも蘇るんだ」
「・・・シンジ君」
最後の言葉の意味は解らなかったが、体の中でシンジの変化を敏感に悟り、カヲルが今にも泣きそうなシンジの顔を胸で優しく包み込んだその時。
「っ!?」
「どうしたんだい・・・って、シ、シンジ君っ!?ち、血がっ!!?」
シンジの体が大きくビクンッと震え跳ね、何事かと抱擁を解いたカヲルは、目をこれ以上なく大きく見開いてビックリ仰天。
何故ならば、シンジが真の姿を現しても黒い右瞳が、白目すらも失って真っ赤に濁りきり、血の涙を滾々と流れ出していたからである。
「フフ、どうやらお客さんが来たらしい。今回は意外と早かったね」
「・・・お客さん?」
「ちょっと、ごめんよ」
「えっ!?」
「フフ、そんな顔をしないで・・・。すぐに戻ってくるから大人しく待っててね」
シンジは血の涙を右人差し指で拭って舐めた後、カヲルの両脇を持ちながら立ち上がり、カヲルを浴槽縁に座らせてバスルームを出て行く。
「・・・あっ!?」
ガラッ・・・。
「カヲルさん・・・。見逃してくれないか?甘い僕を・・・・・・。」
訳が解らず茫然となりかけるも、カヲルが慌てて我に帰って腰を浮かすと、シンジが浴槽出入口のドアを開けて立ち止まる。
ガラッ・・・。
「・・・それは甘いではなく、優しいのさ。ガラスの様に繊細だね。君の心は・・・・・・。
 それにしても、天の采配とは残酷だよ。どうして、僕は彼女より早く君と出逢わなかったのだろう。レイちゃんが羨ましいよ・・・・・・。」
顔も向けずに放ったシンジの言葉に心を揺さぶられ、カヲルはかける言葉を見つけられず固まり、ドアが閉まった後もしばらく立ち尽くしていた。


ピッ・・・ピッピッ・・・ピッ・・・ピッピッピッ・・・ピッ・・・。
巨大なエヴァですらも余裕で通れるネルフ本部中心に存在する超巨大な縦穴『ターミナルドグマ』。
その最深部2008メートル地点、縦穴に数多く存在する人間用の横穴の1つから電子音が響いていた。
ピッピッピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッピッ・・・ピーーーーーッ!!
3重に施されたロック解除を知らす甲高い電子音が鳴るゲートの上に赤く光るは『KEEP OUT』と『立入禁止区域』の文字。
ウィィーーーン・・・。
「こ、これが・・・。あ、あの時、運んできたアダムなのか?」
加持は徐々に上り開いてゆくゲートを待ちきれず潜り入るなり、目の前に広がった広大なエコーががる空間に驚き声を響かせた。
それもそのはず、ここに鎮座する存在が何かは知っていたが、加持が予想していた物とは遥かに違い、尚かつ圧倒的な迫力があったからである。
両掌に楔を打たれ、巨大な赤い十字架に磔られた下半身のない白い巨人。
その顔には七つ目の紋章が刻まれたマスクを被らされ、右目1番上の目からはLCLと思しきオレンジ色の涙が止めどなく滴り落ちていた。
「いいえ、違いますよ。これはリリス、第2使徒リリス・・・。もっとも、ここにあるのは只の抜け殻ですけどね」
「っ!?」
すると何処からともなく声が聞こえ、加持は即座に反応して懐から銃を素早く抜き、銃口を声の発生源である方向へ向ける。
「へえぇ~~・・・。やりますね。気配は完全に消したつもりなのに・・・・・・。
 さすがは特務機関ネルフ・特殊監察部所属、加持リョウジさん。いや、日本政府内務省・調査部所属、加持リョウジさんかな?
 それとも、秘密結社ゼーレ・ブラックアゲート直属、加持リョウジさんかな?いやいや、名前が3つもあると大変ですね。嫌になりません?」
加持へ背を向けてLCL縁面に座るシンジは、両手をポケットに入れつつ立ち上がり、愉快そうなニヤリ笑いをゆっくりと振り向かせた。
ちなみに、シンジの右目は既に黒目へ戻って血の涙も流れておらず、お風呂の途中でここへ直行した為に濡れ髪でバスローブ姿。
カランッ!!カラカラカラ・・・。
「・・・そこまでバレてるのか。お手上げだよ・・・。好きな名前で呼んでくれ」
加持はシンジの言葉に驚愕して目を最大に見開くが、落ち着きを無理矢理に取り戻して銃を捨て、両手を言葉通りに挙げて降参を示すも束の間。
「では、僕にミサトさんを寝取られたのかと疑心暗鬼になり、焦って何度となくミサトさんへアタックするが全て逆目ってる加持リョウジさん」
「ははははは・・・。で、出来れば、いつも通りに呼んで貰えると嬉しいな。シ、シンジ君・・・・・・。」
シンジからクスクスと笑い飛ばされた痛烈な嫌みに顔を目一杯に引きつらせ、脱力した加持は両腕をダラリと垂らして乾いた笑い声をあげる。
「では、加持さん・・・。何故、あなたはこんな危険まで犯して真実を手に入れようと思うのです?
 何故、命を粗末にするんです?3重スパイまでして・・・。せっかく、弟さんや友達を売って生き長らえた命じゃないですか?」
「っ!?・・・何故、それを知っているっ!!!」
するとシンジは表情を真剣な物へと変えて加持を見据え、加持は誰にも明かした事のない己の過去を知っているシンジに驚愕して目を見開く。
「そんな事はどうでも良いんです。今、聞いているのは僕の方ですよ?」
プシュッ!!
シンジは顔色1つ変えず尚も追求を迫り、激情に駆られた加持が思うよりも早く銃を素早く拾い、シンジの額に対して引き金を引いた次の瞬間。
カキィィィィィーーーーーーンッ!!
「・・・え、ATフィールドっ!?」
「そう・・・。あなた達、大人はそう呼んでいますね。何人にも侵されざる聖なる領域、心の光・・・・・・。
 でも、真実を追い求めている加持さんはとっくに気づいているんでしょ?ATフィールドは誰もが持つ心の壁だと言う事を・・・・・・。」
銃弾がシンジの額を撃ち抜く寸前、八角形のオレンジ色の光が神々しく放たれ、加持は我が目を疑って茫然となりながらも問わずにはおれず問う。
「シ、シンジ君・・・。き、君は何者なんだ?」
「僕はシンジ、碇シンジ。それ以上でも、それ以下でもない」
「なるほど、すんなりと応えてはくれないか・・・。だが、これで1つ確信したよ」
だが、シンジは苦笑を浮かべるだけで何も応えず、今度は加持が表情を真剣な物へと変えてシンジを見据える。
「ほほう・・・。何でしょう?」
「真実に近づけば、近づくほど・・・。突然、ゼーレのシナリオがある所で何者かの介入によって悉く途切れている。あれは君だったんだな?」
シンジは両手をポケットから出して愉快そうにニヤリと笑い、加持は銃を懐へ収める代わりに右人差し指をシンジへ突き付け尋ねた。
「さあ、どうでしょう?僕を高く評価してくれるのは嬉しいですけど・・・。まあ、その辺はお得意の自分の中の真実の探求で調べて下さい」
「くっ・・・。」
応えてシンジは肩を竦めてクスクスと笑い、加持がシンジに会話の主導権と全てのカードを握られている悔しさに奥歯を噛む。
「でも、先ほど質問した答えが解ったのなら教えてあげても良いですよ?僕の事も、加持さんの求めている真実も、全て・・・・・・。」
「な、何っ!?」
シンジは再び両手をポケットに入れると、話は終わりだと振り返って加持へ背を向け、足下に描いた真円の闇の中へ沈んで行く。
「だから、それまでは死なないで下さいよ?あなたが死ぬと悲しむ人がいますから・・・。では・・・・・・。」
「っ!?・・・ま、待ってくれっ!!!シ、シンジ君っ!!!!ど、どういう事なんだっ!!!!?」
その光景もさる事ながら、加持はシンジの言葉に驚き、その意味を確かめるべくシンジへ急ぎ駈け寄る。
「ああ、そうそう・・・。加持さんがここへ入るのに使ったカード、ちょっと詰めが甘かったようですね。
 今は僕が結界を張っているから良いけど・・・。僕が消えた途端、警報が鳴りますから気を付けて下さいね?」
「・・・え゛っ!?」
「それじゃあ、頑張って」
しかし、加持は続いたシンジの言葉に思わず動きを止め、シンジが真円の闇へ沈みきって闇色の円も縮み消えた途端。
ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーー、ブーーーッ!!
「おわっ!?・・・な、何だよっ!!!だ、だったら、一緒に連れて行ってくれたって良いだろがっ!!!!ず、狡いぞっ!!!!!」
侵入者の存在を告げる警報が広大な空間にエコーを伴って響き、慌てて加持は予め考えていたLCL内での潜伏を試みる為にLCLへ飛び込んだ。


「さあ、お前達っ!!トロでも、ウニでも、イクラでも、好きな物をジャンジャンと食べて良いぞっ!!!」
避難先のとある寿司屋、カウンター席に座って娘達へ大見栄をはるマックス。
「本当っ!?」
「ああ、本当だともっ!!遠慮せず、何でも頼むと良いっ!!!」
ノゾミは嬉しそうな笑顔で目を輝かせ、マックスが上機嫌にウンウンと頷き、長距離運転の疲れを癒すべく顔におしぼりをあてがった次の瞬間。
ちなみに、洞木姉妹の仲はまだ完全とはいかないにしろ、さすがにこれだけの時間が経った事もあって徐々に修復されつつあった。
「じゃあ、大トロっ!!」
(え゛っ!?・・・な、何だって?)
ノゾミの口からとんでもない注文が飛び出し、マックスは驚愕に目を最大に見開かせ、おしぼりで隠した顔を目一杯に引きつらせる。
なにせ、確かに先ほどトロを提示例に出したが、マックスとしてはトロはトロでもマグロの赤身のつもり。
「なら・・・。あたしもそれにしよっかな?1度で良いから、大トロって食べてみたかったしね」
(え゛っ!?・・・そ、空耳じゃないよな?)
続いて、少し悩んだコダマの口からもとんでもない注文が飛び出し、マックスは額にダラダラと流しまくる冷や汗をおしぼりにしみ込ます。
「ちょっと、2人ともっ!!幾ら何でも、少しは遠慮しなさいよっ!!!」
「だって・・・。」
「・・・ねぇ?」
たまらずヒカリが遠慮なさ過ぎる2人を諫めるが、ノゾミとコダマは堪えず顔を見合わせた後、揃ってマックスへ期待のこもった視線を向けた。
「ははははは・・・。心配するな。父さん、実を言うと臨時収入があったんだ。
 だから、ヒカリも今日だけはお金の事など忘れて、ヒカリが食べたいと思う物を好きなだけ注文しなさい。はははははははははは・・・。」
そのおしぼりを覆っていても感じる視線に意を決し、マックスはやや乾いた笑い声をあげつつ、ぎこちないながら微笑んで努めて冷静を装う。
「そぉ?・・・だったら、私はアワビでも食べてみようかな?」
(え゛っ!?・・・ヒ、ヒカリ。お、お前なら私の心を必ず解ってくれると思ったのに・・・・・・。)
だが、ヒカリの口からもとんでもない注文が飛び出すや否や、マックスの微笑みがピシッと凍り付き、乾いた笑い声も瞬時に止んでしまう。
「それじゃあ、大トロ2つにアワビ1つをお願いします」
「へいっ!!大トロ、2丁っ!!!アワビ、1丁っ!!!!」
そんなマックスの変化に全く気づく事なく、ヒカリは初挑戦のネタに心と声を弾ませ、寿司職人も久々の上客に上機嫌で威勢の良い返事を返す。
(と、ところで、幾らなんだ・・・って、ぬおっ!?な、なんてこった・・・。ね、値段が書いてないじゃないか・・・・・・。
 こ、こりゃぁ~~・・・。と、当分、昼飯はカケソバが精一杯って感じだな。い、いや、それすらも食べられない可能性が・・・・・・。)
一方、マックスはトロとアワビの値段が気になってメニューを開くが、『時価』としか書かれていない恐怖を煽る値段にクラクラと目眩い。
「そちらのお客さんは何にしやしょっ!?」
「そ、そうだな・・・。と、取りあえず、イナリ寿司でも貰おうか?」
「・・・お、お客さん、冗談は止して下さいな。う、うちは廻り寿司やスーパーの寿司コーナーとは違うんですぜ・・・・・・。」
寿司職人は次の注文に胸を期待に膨らませて尋ねるが、返ってきたマックスの娘達とは違う意味でのとんでもない注文に顔を引きつらせる。
「な、なら、アガリを貰って、お腹一杯だからこれが本当のアガリ・・・。な、なんちゃって・・・。はははははははははは・・・・・・。」
「う、うわっ・・・。お、親父ギャグ・・・。」
「・・・お、お父さん、寒すぎ」
「さ、最悪・・・。」
慌ててマックスは取り繕ってジョークを飛ばすも場の空気が凍り付き、『親の心、子知らず』な娘達から白く痛い視線を向けられた。




- 次回予告 -
・・・ここは何処?・・・私は誰?              

そうだっ!!僕はクラス1のコメディアンだっ!!!      

フフ・・・。そう言えば、そんな事もあったね。        

・・・と言う事で地球防衛バンド結成さ。           

えっ!?イロウルはどうしたかって?             

ああ、それなら僕の出番はなさそうだし、リツコさんに任せたよ。


Next Lesson

「使 徒、侵入」

さぁ~~て、この次は山岸さんで大サービスっ!!

注意:この予告と実際のお話と内容が違う場合があります。


後書き

さすがに今回は内容がちょっと不安です。
だって、ストーリーの主軸が洞木三姉妹なんだもの(^^;)
確かにコダマとノゾミは原作設定上でありますが、物語で使うとなるとオリキャラ同然になってしまいますからね。
こう言う話は本来なら外伝でやるべきなのですが、MENTHOLに限っては外伝が出るかどうかも不安なので・・・。
いや、外伝ネタ自体はたくさんあるんですよ?
ただ、スケジュール的に外伝を書くのは難しいかなってと思いまして・・・。(大汗)


感想はこちらAnneまで、、、。

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